循環器トライアルデータベース

ASCOT-LLA
Anglo-Scandinavian Cardiac Outcomes Trial- Lipid Lowering Arm

目的 心血管イベントの危険因子を3つ以上有しコレステロール値が平均値以下の高血圧患者において,コレステロール低下療法によるCHDの一次予防効果を検討。
ASCOT試験は本試験と降圧試験であるASCOT-BPLAの2試験から成る2×2試験。
一次エンドポイントは,非致死的心筋梗塞(MI)と致死的CHD。
コメント 動脈硬化予防のための高脂血症や高血圧治療の意義と効果はほぼ確立された。本試験は,最も日常的に多い高血圧患者で高脂血症がなくても,高リスクであれば高血圧治療に加えて高脂血症治療を行うことにより,動脈硬化予防の有効性があることを示したものである。ALLHATでも同様の試験が行われたが,スタチン群とプラセボ群の間でLDLコレステロール低下率の差が小さいためと思われるが,有効性が示せなかったという報告の後の試験であり,LDLコレステロール低下率が重要であることを示唆する。また,高血圧患者の場合,高血圧治療とともに高脂血症治療をすることの優位性を示したものであり,高脂血症治療は高血圧治療とは独立した効果を示すものといえる。きわめて現実的な試験であり,実地診療に与える影響は大きいものと思われる。(寺本
デザイン ASCOT-BPLA試験(PROBE[Prospective Randomised Open Blinded Endpoints])後,さらにランダム化,プラセボ対照,二重盲検,多施設(719施設:北欧の一般診療686施設,イギリス,アイルランドのregional center 33施設),2×2 factorial,intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は約5年間。登録期間は1998年2月~2000年5月。
対象患者 19,342例。40~79歳。未治療例≧160/100mmHg,治療例≧140/90mmHg。3つ以上の心血管危険因子(左室肥大,2型糖尿病,末梢動脈疾患,55歳以上,喫煙など)を有する例。
除外基準:ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬,ACE阻害薬,β遮断薬,利尿薬,ドキサゾシン,スタチンの禁忌あるいは忍容性のない例,二次性高血圧既往,悪性高血圧,MI既往あるいは治療中の狭心症,3か月以内の脳卒中,一過性脳虚血発作,脳血管手術例など。
ASCOT-LLA試験:総コレステロール≦250mg/dL(6.5mmol/L)。
■患者背景:降圧治療試験;平均年齢62.9歳,男性76.5%,白人95.4%,体重87.5kg(男性),75.2kg(女性),血圧165/95mmHg,危険因子を3つ有する例50.2%,3つ以上49.8%;55歳以上84%,男性76%,微量アルブミン尿/尿蛋白62%,喫煙31%,脂質低下治療試験;63.1歳,81.2%, 94.6%, 87.2kg, 76.0kg, 165/95mmHg,平均リスク因子3.7,糖尿病(atorvastatin群24.3%,プラセボ群24.8%),左室肥大(14.4%, 14.2%),末梢血管疾患(5.1%, 4.9%)。
治療法 ASCOT-BPLA試験でCa拮抗薬をベースとした新規降圧薬併用療法群(9639例)とβ遮断薬をベースとした従来降圧薬併用療法群(9618例)にランダム化し,さらにHMG-CoA reductase阻害薬atorvastatin 10mg群(5168例),プラセボ群(5137例)にランダム化。
結果 ASCOT-LLA試験(10,305例)
一次エンドポイントおよび脳卒中に対する有効性が確認されたため2002年,追跡期間3.3年(中央値)で予定より早く終了した。降圧治療試験終了予定の2005年初めまでatorvastatinは継続投与。
1年後,atorvastatin群ではトリグリセリドがプラセボ群と比べて17%の低下,終了時には14%の低下であった。またLDL-C値は1年後に同群で35%,終了時に29%低下した。atorvastatin群の遵守率は87%,プラセボ群の9%がオープンラベルでatorvastatinを服用。平均血圧はatorvastatin群138.3/80.4mmHg,プラセボ群138.4/80.4mmHg。
一次エンドポイントはatorvastatin群100例,プラセボ群154例(ハザード比0.64, 95%信頼区間0.50~0.83, p=0.0005)。この有効性は1年目から現れた。サブグループによる有効性の差はなかった。
全脳卒中は89例 vs 121例(0.73, 0.56~0.96, p=0.024),総心血管イベントは389例 vs 486例(0.79, 0.69~0.90, p=0.0005),総冠動脈イベントは178例 vs 247例(0.71, 0.59-0.86, p=0.0005)と,いずれもatorvastatin群で有意に低下した。死亡数は185例 vs 212例(0.87, 0.71-1.06, p=0.16)。
★結論★atorvastatin治療による短い追跡期間での主要な心血管イベントの抑制効果は大きく,本試験の結果は次の高脂血症ガイドラインに影響する可能性がある。

ASCOT試験公式サイト
http://www.ascotstudy.org/
文献
  • [main]
  • Sever PS et al for the ASCOT investigators: Rationale, design, methods and baseline demography of participants of the Anglo-Scandinavian cardiac outcomes trial. J Hypertens. 2001; 19: 1139-47. PubMed
  • Sever PS et al for the ASCOT investigators: Prevention of coronary and stroke events with atorvastatin in hypertensive patients who have average or lower-than-average cholesterol concentrations, in the Anglo-Scandinavian cardiac outcomes trial- lipid lowering arm (ASCOT-LLA); a multicentre randomised controlled trial. Lancet. 2003; 361: 1149-58. PubMed
  • [substudy]
  • 試験開始時にatorvastatin群にランダム化された例は,11年後も全死亡率が低い。
    イギリス(UK)コホート・11年後(中央値)の結果:予定より早く3.02年(中央値)後に試験終了後さらに8.25年追跡。試験開始時にUK ASCOT-LLAに登録された4,605例(atorvastatin群2,317例,プラセボ群2,288例)の試験終了時の死亡は173例,追跡延長コホート(Post-LLA:ASCOT-LLA試験全例の45%に相当)の死亡例は,atorvastatin群の生存者2,234例中377例(16.9%),プラセボ群は430/2,198例(19.6%)。試験開始からの総追跡期間(中央値11年)の死亡はatorvastatin群460例(19.9%)vs プラセボ群520例(22.7%):調整前ハザード比0.86;95%信頼区間0.76~0.98(p=0.02)。
    なお,治療中止から2.2年後(ASCOT-BPLA試験終了時:extension study)のスタチン投与はおよそ2/3。
    心血管死は両群間に有意差はなかったが(154例[6.6%]vs 167例[7.3%]:0.89;0.72~1.11, p=0.32),非心血管死(306例[13.2%]vs 353例[15.4%]0.85;0.73~0.99, p=0.03),post-hoc解析:感染症/呼吸器疾患死(0.64;0.42~0.97, p=0.04)はatorvastatin群で有意に抑制され,感染症死は同群で低かった(0.60;0.36~1.02, p=0.06):Eur Heart J. 2011; 32: 2525-32. PubMed
  • 高血圧治療患者において,スタチン治療は中心動脈圧,血行動態に影響せず(Conduit Artery Function Evaluation:CAFE-LLA)。
    891例:atorvastatin群457例,プラセボ群434例。
    脂質:LDL-Cはatorvastatin群でプラセボ群と比べ-32.4mg/dL,総コレステロールは-35.1mg/dL。
    血圧:上腕動脈圧;収縮期血圧の両群差は-0.1mmHg(95%信頼区間-1.8~1.6,p=0.9),脈圧差は-0.02mmHg(-1.6~1.6, p=0.9),中心動脈圧;収縮期血圧差は-0.5mmHg(-2.3~1.2, p=0.5),脈圧差は-0.4mmHg(-1.9~1.0, p=0.6)。
    その他:augmentation indexの両群差は-0.4%(-1.7~0.8, p=0.5),心拍数の差は0.25拍/分(-1.3~1.8, p=0.7)。
    降圧治療による影響はなかった:Circulation. 2009; 119: 53-61. PubMed
  • 治療中止から2.2年後(ASCOT-BPLA試験終了時)もatorvastatinによる一次エンドポイント抑制効果は持続(extension study)。
    試験終了から2.2年間の一次エンドポイントの発生は150例(atorvastatin群59例[1.2%],プラセボ群91例[1.9%])で,atorvastatin群の相対リスク低下は試験終了時と同じ36%(0.53~0.78, p=0.0001)。二次エンドポイントである心血管イベント,冠イベントなども試験終了時とatorvastatinの有効性は変わらず,全死亡はボーダーラインの有意な15%の低下となった(p=0.02):Eur Heart J. 2008; 29: 499-508. PubMed
  • 試験終了時のamlodipine群とatenolol群を合わせた平均血圧はatorvastatin群138.3/80.4mmHg,プラセボ群138.4/80.4mmHgで同様であったが,一次エンドポイントはatorvastatin群の方が有意に低かった(ハザード比[HR]0.64;95%CI 0.50~0.83,p=0.0005)。amlodipine+atorvastatin群(2584例)はamlodipine+プラセボ群に比べ53%有意に抑制(HR 0.47;0.32~0.69, p<0.0001),atenolol+atorvastatin群(2584例)はatenolol+プラセボ群(2583例)に比べ低下度は16%に過ぎなかった(HR 0.84;0.60~1.17, p=0.295)。この両群間差はボーダーラインの有意差であった(p=0.025)。atorvastatin群の総心血管イベントおよび手技抑制効果はamlodipine群でHR 0.73;0.60~0.88(p=0.001),脳卒中(HR 0.69;0.45~1.06, p=0.088)で有意差はなし,atenolol群もそれぞれHR 0.85;0.71~1.02(p=0.079),HR 0.76;0.53~1.08(p=0.129)で有意差は認められなかった。amlodipine+atorvastatin群とatenolol+atorvastatin群間に血圧だけでなく,総コレステロール,LDL-Cにも有意差がなかったことから,CHDイベント抑制の差はatorvastatinとamlodipineの相乗効果の可能性がある:Eur Heart J. 2006; 27: 2982-8. PubMed
  • 2型糖尿病例(2532例):総コレステロールおよびLDL-Cはatorvastatin群はプラセボ群と比べ約38.6mg/dL低下。主要な心血管イベントはatorvastatin群116例(9.2%) vs プラセボ群151例(11.9%)とatorvastatin群で有意に低下(ハザード比0.77, p=0.036)。1000例の糖尿病患者にatorvastatinを1年間投与することにより9例の主要心血管イベント初発を予防できる:Diabetes Care. 2005; 28: 1151-7. PubMed

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収載年月2003.05
更新年月2011.10