循環器トライアルデータベース

START
Stents And Radiation Therapy

目的 ステント内再狭窄を有する患者において,PCI(percutaneous coronary interventions)成功後の90Sr/90Y線源による冠動脈内β線照射治療の安全性と有効性を検討。一次エンドポイントは,標的血管の血行再建術(TVR)および≧50%の再狭窄。安全性の一次エンドポイントは主要有害心イベント[MACE:死亡+心筋梗塞(MI)+TVR]。
コメント PCI例の80%に使用されているステントの初回狭窄率は10~30%と低いが,ステント内狭窄に対する再狭窄率は19~83%と高率である。ステント内再狭窄に対してdebulking法(ロータブレータ,DCA)が行われているが,再狭窄率の有意な低下は得られていない。γ放射線治療(192Ir)は再狭窄率を41%低下させたが,後期ステント内血栓(30日以降)が5.3%に認められるのが問題であった。本研究ではステント内再狭窄に対する90Sr/90Y β放射線治療によりTVRは37%低下し,造影上の再狭窄率は36%低下した。少し気になるのは病変長が照射群で有意に短いことである。新たなステントの使用は20%にすぎず,長期的に抗血小板薬を2剤併用したことが後期ステント内血栓症の発生低下に関連している。γ放射線治療(20~30分)に比しβ放射線治療(3~5分)は治療時間が短いので,標的組織以外への照射が少なく,照射時にカテラボの外へスタッフが出る必要がないことも長所である。今後,ステント内再狭窄に対して広くβ放射線治療が普及するには,標的組織への均一な照射法や照射時間の設定が重要であるとともに,長期的(2~3年)な臨床的観察が必須であろう。(星田
デザイン 無作為割付け,プラセボ対照,単一盲検,多施設(50施設)。
期間 追跡期間は8か月。登録期間は1998年9月~'99年5月。
対象患者 476例。2.7~4.0mmのnative血管にステント内再狭窄(目測で血管径の>50%の狭窄,長さ≦20mm,心筋虚血の客観的証拠)を有するもの。
除外基準:多枝PCIの予定,72時間以内のMI,unprotected左主幹部冠動脈病変,2 つの重複するステント,胸部への放射線治療の既往,ステント内再狭窄に対するステント植込み既往。
治療法 バルーン単独またはrotational atherectomyとの組合わせ,directional atherectomy,エキシマレーザによる血管形成の成功(目測で血管径の<30%の狭窄)を冠動脈造影上で確認後,90Sr/90Y照射群(244例),プラセボ群(232例)にランダム化。非分画heparinを活性化凝固時間275~300秒になるようボーラス投与。
バルーン長20mmの病変(452例)には30mmのBetaCath放射線源列(Novoste Corp),30mmの病変(24例)には40mmのBetaCath放射線源列を使用。目測参照血管径が2.7~3.35mmの場合は,線源の中心線から2mm離れた所の線量が18.4Gy,3.36~4.0mmの場合は23Gyを3~5分間照射。
全例にPCI後にaspirin 325mg/日を投与し,試験期間中継続投与。1998年9~11月に新規ステントを植込んだ例はPCI後ticlopidine(250mg×2回/日)を14日間投与,11月以降に植込んだ例はticlopidine(250mg×2回/日)あるいはclopidogrel(75mg/日)を60日以上投与した。8か月後に冠動脈造影実施。
結果 PCIの実施状況はrotational atherectomyが照射群43.9%,プラセボ群39.8%,エキシマレーザは各群5.7%, 7.4%,directional atherectomyは0%, 0.9%,新規ステントの植込みは20.9%, 19.8%。追跡冠動脈造影の実施は照射群198例(83.2%),プラセボ群188例(81.0%)。
参照血管径は照射群2.82mm,プラセボ群で2.85mmと両群間に有意差はなかったが,病変長は8.62mm vs 12.5mmと照射群で有意に短かった(p<0.001)。
一次エンドポイントのTVRは,90Sr/90Y照射群39例(17.0%),プラセボ群56例(26.8%)(p=0.015),binary再狭窄率(血管径の≧50%の狭窄)は28.8% vs 45.2%(p=0.001)であった。MACEsの発生は44例(19.1%) vs 60例(28.7%)(p=0.024)。
ステント血栓症は90Sr/90Y照射群で244日目に1例,プラセボ群で手技後<24時間に1例発生した。
★結論★ステント内再狭窄患者において,90Sr/90Yを用いたβ線照射は安全であり,ステント内狭窄の再発防止に有効である。
文献
  • [main]
  • Popma JJ et al for the stents and radiation therapy (START) investigators: Randomized trial of 90Sr/90Y beta-radiation versus placebo control for treatment of in-stent restenosis. Circulation. 2002; 106: 1090-6. PubMed

▲pagetop
EBM 提供:大日本住友製薬 「循環器トライアルデータベース
ライフサイエンス出版
ご不明の点はお問い合わせください
収載年月2002.12