循環器トライアルデータベース

MADIT II
Multicenter Automatic Defibrillator Implantation Trial II

目的 心筋梗塞(MI)後の左室機能低下例において,植込み型除細動器(ICD)の生命予後改善効果を検討する。
コメント 一次予防試験のCABG PatchではICDの予防効果が示されなかった。選択基準の差のみで説明できるか否か? 今後の検討が必要である。(井上
デザイン 無作為割付け,多施設(アメリカの71施設,欧州の5施設),intention-to-treat解析。
期間 平均追跡期間は20か月(6日~53か月)。
実施期間は1997年7月~2001年11月。
対象患者 1232例。21歳以上(上限なし)。1か月以上前にMIを発症し,登録前3か月以内のEF≦0.30。
除外基準:FDAが承認したICD適応例,NYHA IV度,3か月以内の血行再建術既往,発症1か月未満のMI,高度の脳血管疾患など。
治療法 ICD群(742例),従来の薬物療法群(490例)に3:2にランダム化。
電気生理検査は対象の条件とはしなかった。クロスオーバーを可とした。
両群ともβ遮断薬,ACE阻害薬,脂質低下薬の適切な使用を強く推奨した。
結果 当初2500例を登録予定にしていたが,ICD群の有効性が明確になったため2001年11月20日に試験を中止した。
両群の患者背景および試験終了時の治療薬の使用率に差はなかった。
死亡率はICD群14.2%,従来群19.8%であった。従来群と比べICD群では死亡リスクのハザード比は0.69(95%信頼区間 0.51-0.93, p=0.016)。カプラン・マイヤー生存曲線によると,約9か月後から両群の差,すなわちICD群の死亡率低下が始まり,その後持続した。ICD植込みによる死亡率の低下は1年後が12%,2年,3年後が28%であった。
年齢,性,EF,NYHA,QRS間隔による層別化解析においても,ICD群の生存率の改善効果は同じであった。
クロスオーバーは54例。薬物治療群の22例(4.5%)がICDを植込み,ICD群の21例(2.8%)が植込みを受けず,11例(1.5%)がICDを除去した。
★結論★MI後に高度の左室機能不全がある例において,ICDの予防的植込みは生存率を改善した。
文献
  • [main]
  • Moss AJ et al for the multicenter automatic defibrillator implantation trial II investigators: Prophylactic implantation of a defibrillator in patients with myocardial infarction and reduced ejection fraction. N Engl J Med. 2002; 346: 877-83. PubMed
  • [substudy]
  • 簡便なリスクスコアにより,ICD療法の長期生存効果が得られる低~中等度リスク例を同定。
    1,191例において,5つの危険因子(NYHA>II度,>70歳,血液尿素窒素(BUN)>26mg/dL,QRS間隔>0.12秒,心房細動)の保有状況とICD療法の長期生存効果との関係を評価(追跡期間中央値7.6年):低リスク例(スコア[保有危険因子数]=0;345例)と中等度リスク例(スコア=1~2;646例)では,ICD群は従来群にくらべ8年生存率が有意に高かった(低リスク例:75% vs 58%, p=0.004;中等度リスク例:47% vs 31%, p<0.001)。一方,高リスク例(スコア≧3;200例)では8年生存率は両群で同等であった(19% vs 17%, p=0.50)。多変量解析の結果,低リスク例(ハザード比0.52;95%信頼区間0.38~0.73)と中等度リスク例(0.66;0.56~0.79)ではICD療法は長期生存と有意に関連したが(ともにp<0.001),高リスク例では有意な関連は認められなかった(0.84;0.63~1.13, p=0.247):J Am Coll Cardiol. 2012; 59: 2075-9. PubMed
  • ICDの生存率改善効果は8年後も持続。
    2009年3月まで追跡(中央値7.6年後)した結果:全死亡率はICD群49% vs ICD非植込み群62%(p<0.001)。ICDは有意な長期生存効果と関連(0~8年死亡のハザード比[HR]0.66;95%信頼区間0.56~0.78, p<0.001)。ICD治療は延長追跡期間の初期の有意な死亡リスク低下と関連(0~4年後のHR 0.61;0.50~0.76, p<0.001)で,後半の救命効果も継続した(0.74;0.57~0.96, p=0.02)。単腔ICD例では有効性が顕著で持続したが,二腔ICD例では後半に死亡率が上昇した:Circulation. 2010; 122: 1265-71. PubMed
  • ICDの不適切なショックの作動は比較的起こり(約3割),全死亡リスクの上昇と関連した。
    ICD群で1回以上の不適切なショックは83例(11.5%),全ショック(590件)のうち184件(31.2%)をしめた。喫煙,心房細動(AF)既往,拡張期高血圧,適切なショックの既往が,不適切なショックの予測因子。特に,AFが最も共通して発生し(44%),次いで上室頻拍(36%),abnormal sensing(20%)であった。不適切なショック例ではstability detection algorithmがプログラムされている割合が少なかった(17% vs 36%, p=0.03)以外に,プログラムされたパラメーターの有意差はなかった。不適切なショックは全死亡率が高かった(ハザード比2.29, p=0.025):J Am Coll Cardiol. 2008; 51: 1357-65. PubMed
  • ICDの有効性が大きかったのは1つ以上の危険因子を有する症例(786例)で死亡リスクが49%低下(p<0.001)。一方,危険因子を有していない例(345例;ハザード比0.96, p=0.91),超高リスク(尿素窒素,クレアチニン,年齢,EF,QRS幅などで定義)例(60例;1.00, p>0.99)ではICDの有効性はみられなかった:J Am Coll Cardiol. 2008; 51: 288-96. PubMed
  • 収縮期血圧(SBP)が10mmHg上昇するごとに全死亡は15%(p=0.005),心臓死は14%(p=0.01),突然心臓死は16%低下した(p=0.04)。拡張期血圧(DBP)にも同様の逆相関がみられた。SBP,DBP4分位でICDの生命予後効果が最も低いのは,SBP>130mmHg(ハザード比1.04),DBP≧80mmHg(1.05):J Am Coll Cardiol. 2007; 49: 1427-33. PubMed
  • 本試験におけるICD例の費用対効果は低い。しかしながら,microvolt-levelのT波交互脈(T wave alternans: TWA)検出によるリスクの層別により,ICDの費用対効果は改善する:J Am Coll Cardiol. 2006; 48: 112-21. PubMed
  • 単腔,二腔ペーシングを問わずICD群では生存率が改善したが,心不全リスクが上昇した。心不全の発症は死亡リスクの上昇と関連(ハザード比[HR]3.80, p<0.001)。単腔ペーシング例は心不全の発症は生存率に関連しなかったが(発症前HR 0.59,発症後0.61),二腔ペーシング例では発症後の生存率が有意に低下した(それぞれHR 0.26, 0.83, p=0.01):Circulation. 2006; 113: 2810-7. PubMed
  • 3.5年の追跡時のICD群は薬物療法群より0.167年(2か月)生存年は長く,追加コストは39,200ドルで,費用対効果比は235,000ドル/生存年である。3種類の予測による12年後の生存率は25.7%, 19.5%, 13.4%,費用対効果比はそれぞれ78,600ドル,91,300ドル,114,000ドル/生存年: J Am Coll Cardiol. 2006; 47: 2310-8. PubMed
  • 血行再建術(CR)後のICD植込みの有効性はCR施行から植込みまでの時間に依存する。CR施行から6か月以降にICDを植込んだ例の生存率は有意に良好であったが,CR施行から6か月以内のICD植込み例では生存は改善しなかった:J Am Coll Cardiol. 2006; 47: 1811-7. PubMed
  • スタチン使用は初発であるか否かを問わず心臓死あるいは心室頻拍(VT)/細動(VF)を抑制し,VT/VFの発現低下と関連した:J Am Coll Cardiol. 2006; 47: 769-73. PubMed
  • inducibility例(標準定義:3回以内の期外刺激により誘発された持続性単形性心室頻拍[VT]あるいは多形性VT,または2回以内の期外刺激に誘発されたVF)は211例(36%)でみられVT増加の尤度と関連した(p=0.023)。自然発症VFは非誘発例よりも誘発例で少なく(p=0.021),2年カプランマイヤー曲線でVT/VFは誘発例で29.4%,非誘発例で25.5%。標準定義のinducibilityはVT+VFの予測因子にはならず,狭義の定義(単形性VTのみ)は標準定義を凌いだ:J Am Coll Cardiol. 2006; 47: 98-107. PubMed
  • 平均追跡期間17.2か月でappropriate ICD treatment(至適なICD治療)は169例。うっ血性心不全および冠動脈イベントによるinterim hospitalization(IH-CHFおよびIH-CE) ,β遮断薬非投与,digitalis投与,血液尿素窒素(BUN)>25,BMI≧30kgm²,NYHA心機能分類>IIは心室頻拍(VT),心室細動(VF)による至適ICD治療リスクの増加,あるいは死亡と相関。多変量解析によると,IH-CHFはVTあるいはVF,VT+VF+死亡の有意なリスク上昇と相関し,IH-CEはVT,VF,死亡の上昇と相関する:J Am Coll Cardiol. 2005; 46: 1712-20. PubMed
  • ICDにより不整脈消失から1年後の生存率は80%であるが,生存例は心不全および非心臓突然死のリスクが高いため長期の左室機能不全の予防,管理に傾注する必要がある:Circulation. 2004; 110: 3760-5. PubMed
  • 再分極不安定のマーカーであるQT波変動の増加は心室頻拍/心室細動のリスクの上昇と相関:J Am Coll Cardiol. 2004; 44: 1481-7. PubMed
  • ICD群の死亡率低下はほとんどが突然死の低下によるものだった:J Am Coll Cardiol. 2004; 43: 1459-65. PubMed
  • ICD群の死亡率:<18か月7.2%,18~58か月4.9%,60~119か月8.2%,≧120か月9.0%;p=0.19,従来群:7.8%, 8.4%, 11.6%, 14.0%;p=0.03。ICD群の死亡リスクの調整後ハザード比は,MIから<18か月0.97(p=0.92),≧18か月0.55(p=0.001):Circulation. 2004; 109: 1082-4. PubMed

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収載年月2002.04
更新年月2012.07