循環器トライアルデータベース

RENAAL
Reduction of Endpoints in NIDDM with the Angiotensin II Antagonist Losartan

目的 2型糖尿病および腎症患者において,アンジオテシンII受容体拮抗薬losartanの腎保護効果を検討。

一次エンドポイントは,血清クレアチニン濃度の倍増+末期腎障害(ESRD)+死亡。
二次エンドポイントは,心血管疾患による合併症+死亡の発生,および蛋白尿,腎疾患の進展度。
コメント N Engl J Med. 2001; 345: 861-9. へのコメント
本試験の特徴はすでにCa拮抗薬,利尿薬などの降圧薬を使用している糖尿病腎症の例にアンジオテシンII受容体拮抗薬を追加することによって,腎障害の進展を予防できることを示した点にあり,実地臨床に即したものである。しかもアンジオテシンII受容体拮抗薬の腎保護効果は降圧作用とは独立したものであることが示されている。オープンラベルのアンジオテシンII受容体拮抗薬,ACE阻害薬以外の降圧薬の併用率も高いことから,アンジオテシンII受容体拮抗薬治療群の有用性は数字以上に高い可能性がある。(桑島
デザイン 無作為割付け,プラセボ対照,二重盲検,多施設(アジア,欧州,中央・南北アメリカ28か国),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は平均3.4年(2.3~4.6年)。
対象患者 1513例。平均年齢60歳(31~70歳)。腎症:尿アルブミン(mg/L)/クレアチニン(g/L)比≧300,または尿蛋白排泄率≧0.5g/日,血清クレアチニン値1.3~3.0mg/dL,体重>60kgの男性の場合の低制限値は1.5mg/dL。
除外基準:1型糖尿病,非糖尿病性腎症,登録前1か月以内の心筋梗塞,CABG既往,6か月以内の脳血管事故,PTCA既往,前年度の一過性虚血脳発作,登録前の心不全既往。
治療法 6週間のスクリーニング期間中,高血圧例はACE阻害薬,アンジオテシンII受容体拮抗薬以外の降圧療法を継続した。ACE阻害薬あるいはARB投与例は利尿薬,Ca拮抗薬,αあるいはβ遮断薬,中枢性作動薬,あるいはこれらの併用に変更。蛋白尿のレベルにより層別化(アルブミン/クレアチニン比<2000,あるいは≧2000)。
losartan群(751例):50mg/日,プラセボ群(762例)にランダム化。降圧療法は併用。4週間後目標血圧値(SBP<140mmHg,DBP<90mmHg)を達成できない場合,試験薬を100mg/日に増量。8週間後,目標血圧達成のためACE阻害薬,アンジオテシンII受容体拮抗薬を除く降圧薬を追加あるいはを増量した。糖尿病の標準的な治療(ヘモグロビン値,空腹時血糖値の測定を含む)は継続。
結果 2001年2月10日に中止。
ベースライン時,93.5%が降圧薬を服用していた。アジア人は252例。
一次エンドポイントの発生はプラセボ群359例(47.1%)に対し,losartan群327例(43.5%)で,losartan群のリスク低下は16%(p=0.02)であった。losartan群のクレアチニン濃度倍増のリスク低下は25%(p=0.006),ESRDのリスク低下は28%(p=0.002)であったが,死亡抑制効果は認められなかった。losartanの腎保護効果は降圧による効果より大きかった。二次エンドポイントの発生は両群で同様であったが,losartan群で心不全による初回入院率が有意に低かった(リスク低下32%, p=0.005),蛋白尿の程度はlosartan群でプラセボ群に比べ35%低下した(p<0.001)。
★結論★2型糖尿病および腎症患者においてlosartanに有意な腎保護効果が認められ,忍容性も良好であった。
文献
  • [main]
  • Brenner BM et al for the RENAAL study investigators: Effects of losartan on renal and cardiovascular outcomes in patients with type 2 diabetes and nephropathy. N Engl J Med. 2001; 345: 861-9. PubMed
  • [substudy]
  • losartanの尿酸低下作用と腎転帰-losartan治療初期の血清尿酸値の低下は長期腎リスク低下と強く関連。
    尿酸値データのある1,342例において,losartan治療開始後 6か月間の血清尿酸値(SUA)の変化と腎イベント(血清クレアチニンの倍加+末期腎不全の複合エンドポイント)の関係を評価した結果(post hoc解析):ベースラインSUAはlosartan群,プラセボ群ともに6.7mg/dL。6か月後はlosartan群で変化がなかった一方,プラセボ群で6.9mg/dLに増加した(群間差:-0.16mg/dL, p=0.031)。プラセボ群ではその後も尿酸値が30か月後まで増加し,36か月後に低下,losartan群も6か月後以降は増加を示した。
    腎イベントリスクはSUAの低下0.5mg/dLごとに6%(95%信頼区間10~3%)低下した。この関係はeGFRやアルブミン尿を含む他のリスクマーカーとは独立していた。腎エンドポイント発生直前のSUA値で調整すると,losartanの腎保護作用は22%から17%に弱まったことから,losartanの腎保護効果の約1/5はSUA低下効果によるものと考えられた:Hypertension. 2011; 58: 2-7. PubMed
  • 腎症を合併した2型糖尿病患者において,losartan群で6か月後の血清カリウムが上昇,≧5mmol/L 例で腎リスクが増大し,主結果で示された腎保護効果が減弱。
    カリウムと転帰の関係(post hoc解析):6か月後,血清カリウム正常(<5mmol/L)例は928例(69.4%),上昇(≧5mmol/L)例は410例(30.6%);≧5.5mol/L例は107例。losartan群で血清カリウムはベースライン;4.59→6か月後;4.79mmol/Lとプラセボ群(4.62→4.56mmol/L)より有意に上昇し,≧5mmol/L例はlosartan群で22.2%→38.4%(プラセボ群26.2%→22.8%),≧5.5mmol/L例は2.9%→10.8%(4.6%→5.1%)。≧5.0mmol/L例は<5mmol/L例に比べ,ベースライン時の血清カリウム値が高く,高ACR(アルブミン/クレアチニン比),低拡張期血圧,低ヘモグロビン値であった。多変量解析によると,≧5.0mmol/Lの予測因子はlosartan治療(オッズ比2.8),血清カリウム(2.3)で,低eGFRも血清カリウム上昇と関連した。
    血清カリウムと腎転帰(血清クレアチニン濃度の倍化,末期腎障害)リスクとの関連:≧5mmol/L例の調整後ハザード比1.22;95%信頼区間1.00~1.50: Diabetologia 2011; 54: 44-50. PubMed
  • >65歳は421例(27.8%)で,losartanの有効性,安全性は65歳以下と同様であった:一次エンドポイントの補正後ハザード比は≦57歳:0.80(95%信頼区間0.80~1.04),>57~65歳:0.68(0.53~0.87),>65歳:0.77(0.57~1.05):Diabetes Care. 2006; 29: 2210-7. PubMed
  • 2型糖尿病性腎症において,アルブミン尿は心血管疾患リスクの重要な予測因子である:アルブミン尿高値(≧3g/g)は低値(<1.5g/g)に比べ心血管リスクが1.92倍,心不全リスクは2.70倍。最初の6か月間でのアルブミン尿の抑制が心血管予防に寄与すると思われる:Circulation. 2004; 110: 921-7. PubMed
  • アルブミン尿は主な腎リスクマーカーである。蛋白尿の量が増えると腎リスクも上昇。治療中(6か月目)のresidualアルブミン尿はベースライン時のアルブミン尿と同様に腎転帰の強いマーカーである:Kidney Int. 2004; 65: 2309-20. PubMed
  • 2型糖尿病性腎症の腎転帰において,収縮期血圧(SBP)は拡張期血圧よりも強い予測因子である。SBP 140~159mmHg患者は末期腎症(ESRD),死亡のリスクが38%上昇し(p=0.05),SBPが10mmHg上昇するごとにESRD,死亡のリスクは6.7%増加した(p=0.007)。ベースライン時の脈圧が最も高かったものが腎症進展のリスクが最大で,SBPを140mmHg以内に降圧した場合のリスク低下も最も大きかった:Arch Intern Med. 2003; 163: 1555-65. PubMed
  • 血圧コントロール後の蛋白尿,腎不全の進展度,アルブミン値,ヘモグロビンは腎疾患の独立した危険因子である。中でも蛋白尿のレベルは腎障害進展の最も重要な危険因子:Kidney Int. 2003; 63: 1499-507. PubMed

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収載年月2001.10
更新年月2013.09