循環器トライアルデータベース

LIFE
Losartan Intervention for Endpoint Reduction in Hypertension

目的 心電図上,左室肥大を認める本態性高血圧患者において,アンジオテンシンII受容体拮抗薬losartanとβ遮断薬atenololの有効性を比較。一次エンドポイントは心血管イベント(死亡,心筋梗塞[MI],脳卒中)。
コメント Lancet. 2002; 359: 995-1003. へのコメント
左室肥大の合併は脳卒中頻度を増加させ,また退縮は脳心血管イベントの減少をもたらすとする成績を裏付ける結果である。losartanの一次エンドポイント予防効果はほとんど脳卒中予防効果によるもので,心筋梗塞予防効果はatenololと差がみられていない。言い換えればlosartanの心筋梗塞予防効果はatenololと同等であるが,脳卒中予防効果ははるかに優れているということである。両群の降圧効果はほぼ同等であることからlosartanの脳卒中予防効果は降圧効果以外の要因が関与していると考えられるが,losartan群ではatenolol群に比べて左室肥大の退縮効果が大きかったこと,糖尿病発症は少なかったことの2点がなんらかの関連で脳卒中予防効果をもたらしたと推定されるが,なお脳卒中の病型別の予防効果などサブ解析の結果が待たれる。(桑島

→サブスタディ(J Am Coll Cardiol. 2005; 45: 705-11, 712-9.)へのコメント
losartanは心房細動(AF)の発生を抑制するばかりでなく,AF発症においてもatenololに比べて有意に脳卒中,心血管死を抑制することができる(井上)。
LIFE試験のこの二つのサブスタディは,心房細動による脳塞栓症の予防策として唯一確認されている治療法はワルファリンによる抗凝固療法であるが,アンジオテンシンII受容体拮抗薬も左室肥大のみならず左心房のリモデリングを予防して心房細動発作の予防とともに血栓形成を予防する可能性があることを示している。(桑島

→サブスタディ(Lancet. 2002; 359: 1004-10.)へのコメント
左室肥大に加えて糖尿病を有する高リスクの高血圧患者に対するlosartanとatenololの心血管合併症発生に対する予防効果を比較したものであるが,一次エンドポイントに関してはlosartan群が有意に少なかった。しかし内訳をみると全体解析と異なり脳卒中,心筋梗塞発症の予防に関しては両群間に有意差はみられなかったが,心血管死亡はlosartan群の方が有意に少ないという結果であり,解釈が難しい。降圧効果は両群同等であることから,やはり左室肥大の退縮およびレニンアンジオテンシン系の抑制を介した効果と考えるのが妥当か。(桑島
デザイン 無作為割付け,二重盲検,多施設(デンマーク,フィンランド,アイスランド,ノルウェー,スウェーデン,イギリス,アメリカの945施設),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は4年以上,平均追跡期間は4.8年。
一次エンドポイント発生数が1040例に達するまで。
対象患者 9193例。55~80歳(平均年齢66.9歳)。座位血圧160~200/95~115mmHg。降圧治療の有無は問わない。
除外基準:二次高血圧,6か月以内のMIあるいは脳卒中,β遮断薬あるいはCa拮抗薬の必要な狭心症,心不全あるいはEF≦40%など。
治療法 losartan群(4605例):50mg/日,atenolol群(4588例):50mg/日にランダム化。2か月経過しても目標血圧≦140/90mmHgに達しない場合はhydrochlorothiazide(HCTZ)12.5mgを追加投与。4か月後に十分な降圧が得られない場合は,losartan,atenololの投与量を倍増(各100mg/日)しHCTZを12.5mg追加する。6か月後に達しない場合は他の降圧薬を追加。
結果 平均降圧はlosartan群で30.2/16.6mmHg,atenolol群で29.1/16.8mmHg(p=0.017/p=0.37)。動脈圧は102.2mmHg vs 102.4mmHg。目標降圧達成率は2268例(49%) vs 2099例(46%)。心拍数はlosartan群よりatenolol群が有意に低下した(p<0.0001)。試験終了時の試験薬継続率は84% vs 80%。
一次エンドポイントの発生はlosartan群508例(11%:23.8例/1000人・年),atenolol群588例(13%:27.9例/1000人・年)であった[相対リスク(RR)0.87, 95%信頼区間(CI)0.77-0.98, p=0.021]。心血管死は204例 vs 234例(RR 0.89, 95%CI 0.73-1.07, p=0.206),全脳卒中は232例 vs 309例(RR 0.75, 95%CI 0.63-0.89, p=0.001),全MIは198例 vs 188例(RR 1.07, 95%CI 0.88-1.31, p=0.491)。
糖尿病の新規発症率はlosartan群で低かった。
★考察★losartanとatenololの降圧度は同様であるが,atenololに比べlosartanの方が心血管合併症および心血管死を抑制し,忍容性も良好である。losartanには降圧効果をしのぐ有効性があると思われる。
◆ 2002年ISH/ESHにおいて糖尿病コホートの発表:losartan群で総死亡率が39%(p=0.002),心血管疾患リスク(p=0.031), LVH(p<0.0001)がそれぞれ低下。→学会情報
文献
  • [main]
  • Dahlof B et al for the LIFE study group: Cardiovascular morbidity and mortality in the losartan intervention for endpoint reduction in hypertension study (LIFE); a randomised trial against atenolol. Lancet. 2002; 359: 995-1003. PubMed
  • [substudy]
  • SBPの降圧度とAFリスク-達成SBPが低いとAF発症リスクも低い。ただし≦125mmHgではこの関連はみられず。
    AFの既往のない洞調律の患者において,降圧治療下での達成SBP値とAF新規発症リスクの関連を検討した結果(8,831例[平均年齢67歳・女性4,809例];平均追跡期間4.6年): 達成SBP値はAF発症例ではAF診断直前値,AF非発症例では最終測定値を使用。
    AF新規発症は701例(7.9%)。非発症例にくらべ高齢,男性,非黒人,虚血性心疾患,MI・脳卒中・心不全既往,アルブミン尿が多かった。
    SBPを時間変動共変量とした多変量解析で,≦130mmHg(最小五分位)は≧142mmHg(中央値)にくらべAF発症リスクが40%(ハザード比0.60;95%信頼区間0.45~0.82),131~141mmHgは24%(0.76;0.62~0.93)低かった。またSBPのカットオフ値を5mmHg単位で増加していくと,降圧による有意なリスク低下を認めたのは≦130~≦160mmHgの範囲で,≦125mmHgでは関連はみられなかった:Hypertension. 2015; 66: 368-73. Epub 2015 Jun 8. PubMed
  • ECG上のストレインパターン(ST低下,T波陰転)新規発症は全死亡を含む心血管イベントリスクの増大と関連。
    降圧治療1年後の7409例でベースライン時に続いてECGを実施。1年後のECGから3.8年の追跡期間中に心血管死236例(3.2%),心筋梗塞198例(2.7%),脳卒中313例(4.2%),これら3複合イベントの初発は600例(8.1%),突然死92例(1.2%),全死亡486例(6.6%)。
    ベースライン時,1年後の両方のECGでストレインパターンを有していなかったのは6323例(85.3%),1年後のECGでのregress(消失)は245例(3.3%),両方のECGで確認されたpersist(持続)は549例(7.4%),1年後に新規発症したのが292例(3.9%)。両方のECGでストレインパターンを有していなかったものに比べ,新規ストレイン発症はイベントリスクが2.8~4.7倍上昇,消失,持続例のイベント率はその中間。多変量解析後,新規ECGストレイン発症は心血管死(ハザード比2.42),心筋梗塞(1.95),脳卒中(1.98),複合イベント(2.05),心臓突然死(2.19),全死亡(1.92)と独立して関連した。が,消失,持続ストレインとの関連リスクは消失した:Circulation. 2009; 119: 1883-91. PubMed
  • 左室肥大と新規糖尿病発症(平均追跡期間4.6年で562例[7%]発症)の関連。
    降圧薬治療中に心電図上のCornell product criteriaによる左室肥大がある場合に比べ,左室肥大退縮例あるいは肥大のない症例は新規糖尿病発症リスクが低下。これはlosartan治療,その他の糖尿病の危険因子とは独立していた:Hypertension. 2007; 50: 984-90. PubMed
  • 心臓突然死(SCD)は190例。
    治療中,ECGでの左室肥大を有していない症例ではSCDリスクが低下:Circulation. 2007; 116: 700-5. PubMed
  • 心房細動の既往(342例),ベースライン時のECGで心房細動だったもの(135例)を除外した8831例での検討:平均追跡期間4.7年後,290例が新規心房細動(AF)を発症。降圧治療期間中の左室肥大(LVH)が軽減したものは新規AFの発症率が低く,これは降圧,治療法とは独立している。ECG上でのLVHの軽減あるいは予防を目指した降圧治療により,AFの新規発症を抑制できる可能性が示唆される:JAMA. 2006; 296: 1242-8. PubMed
  • 左室容量とヘモグロビン送達度(ヘモグロビン濃度と心拍出量から算 出)の関係を検討。女性においてヘモグロビン送達度は,左室内径,中 隔厚および後壁厚,左室容量,左室中壁短縮率,A波速度と正の 相関を,総末梢抵抗,E/A比,E波減速時間,左室等容弛緩 時間と負の相関を示した。男性では左室内径,左室容量,A波速 度と正の相関,左室中壁短縮率,相対壁厚,総末梢血管抵抗,E/ A比と負の相関を示した:Hypertension 2006; 47: 868-73. PubMed
  • 低リスク症例(LRG群4282例):心血管疾患の既往なし,非糖尿病,非収縮期高血圧,ECG上の左室肥大の四分位の第3分位と高リスク症例(HRG群4911例):収縮期血圧の降圧はLRG群でlosartan群がatenolol群よりも-1.8mmHg(p=0.001),HRG群で-0.7mmHg(p=NS)。一次エンドポイントはHRG群33.2%(losartan群29.6%,atenolol群37.1%;p=0.006),LRG群16.1%(p<0.001)(それぞれ15.6%, 16.6%;p=0.632)。LRG群 vs HRG群の複合エンドポイント,脳卒中,心房細動は有意ではなかったが,心血管死は有意差が認められた(p=0.018)。losartan群はatenolol群に比べLRG群,HRG群で脳卒中,新規発症糖尿病,新規発症心房細動のリスクを低下させた:Hypertension. 2005; 46: 492-9. PubMed
  • 糖尿病併発例1195例(1型185例,2型1010例)は非糖尿病例に比べ治療による心電図上の左室肥大(LVH。Cornell Product:CP)の退縮効果が小さく(-138mm・ms vs -204mm・ms, p<0.001),CPによるLVH率(56.0% vs 48.1%, p<0.001),心血管死,心筋梗塞,脳卒中,全死亡,一次エンドポイントの発生率も高い。糖尿病併発例では心電図上のLVHの退縮は転帰のサロゲートマーカーとして有用ではない:Circulation. 2006; 113: 1588-96. PubMed
  • 糖尿病例(1063例)のサブ解析:ベースライン時のアルブミン尿の上昇は心血管リスクの上昇と相関し,一次エンドポイントのリスクは治療中の尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)と相関した。UACRの低下はlosartan群の方が大きく,同群の有効性はUACR値が最も高かった例で顕著であったが,アルブミン尿が有意に相関したのは全死亡のみであった:Diabetes Care. 2006; 29: 595-600. PubMed
  • 積極的な降圧治療のもとでも,心電図上のストレインはうっ血性心不全(CHF)の進展およびCHF死の重要な予測因子である:Circulation. 2006; 113: 67-73. PubMed
  • UACRは一次エンドポイントと強く相関した:Hypertension. 2005; 45: 198-202. PubMed
  • losartan+aspirin群はatenolol+aspirin群に比べ一次エンドポイントを32%有意に低下した(95%CI 0.55~0.86, p=0.86, p=0.001)。他の因子を除いたあとの治療とaspirinは,一次エンドポイント(p=0.016)および心筋梗塞(p=0.037)と有意に関連した:J Am Coll Cardiol. 2005; 46: 770-5. PubMed
  • 痩せ(BMI<20kgm²・2%),正常体重(BMI 20~24.9kgm²・24%)),過体重(BMI 25~29.9kg/m²・45%),肥満(class I;BMI 30~34.9kg/m²・21%, class II;BMI 35~39.9kg/m²・6%, class III;BMI≧40kg/m²・2%)。糖尿病例はBMIの上昇に伴い増加,またatenolol群で増加した。危険因子で補正後,体格による一次エンドポイントの差はみられなかった。心血管死は正常体重群に比べ痩せ群(p<0.05), class II~III群(いずれもp<0.04)で多かった:Circulation. 2005; 111: 1924-31. PubMed
  • atenolol群に比べたlosartan群の致死的脳卒中の補正後ハザード比(HR)は0.65(95%信頼区間[CI]0.43~0.96, p=0.032),アテローム血栓性梗塞はHR 0.73(95%CI 0.60~0.89, p=0.002)。出血性脳卒中と塞栓性脳卒中の低下に有意差はなかった。losartan群の全脳卒中への有効性はベースライン時およびどの時点における危険因子とも独立していた。平均的な患者における5年間で脳卒中1例を予防するためのNNTは54,脳血管疾患25,収縮期高血圧24,心房細動9:Hypertension. 2005; 45: 46-52. PubMed
  • ECG上の左室肥大例および心房細動(AF)既往例において,losartan群はatenolol群よりも一次エンドポイントである複合心血管合併症,死亡(p=0.009)および脳卒中(p=0.039),心血管死(p=0.048)をより抑制した:J Am Coll Cardiol. 2005; 45: 705-11. PubMed
  • losartan群はatenolol群より新規AF発症を有意に抑制(相対リスク0.67, p<0.001)。losartan投与とAF新規発症は標準的なリスク因子で調整後も脳卒中の独立した予測因子であった:J Am Coll Cardiol. 2005; 45: 712-9. PubMed
  • losartanに必要に応じHCTZやその他の薬剤を追加した方が,従来のatenololをベースにした治療よりも,左室肥大退縮効果が大きい:Circulation. 2004; 110: 1456-62. PubMed
  • 黒人ではatenololが一次エンドポイントを抑制(losartanのハザード比1.67, p=0.033)し,非黒人ではlosartanが抑制した(0.829, p=0.003):J Am Coll Cardiol. 2004; 43: 1047-55. PubMed
  • 降圧治療中のCornell product and Sokolow-Lyon voltageによる心電図上の左室肥大の重症度の低さと心血管疾患合併症および死亡率の低さは,降圧および治療法とは独立して関連する:JAMA. 2004; 292: 2343-9. PubMed
  • 左室心筋重量の少なさと心血管イベント発症率の低さとは相関する:JAMA. 2004; 292: 2350-6. PubMed
  • atenololを第一選択薬とする降圧療法よりもlosartanによる降圧療法の方が,心電図(Cornell voltage-duration productおよびSokolow-Lyon)上の左室肥大の退縮が大きい:Circulation. 2003; 108: 684-90. PubMed
  • 2年間の降圧療法による脈圧(PP)低下(767例中,PP<63mmHgは418例,≧63mmHgは349例):高齢,小さい降圧,糖尿病併発,低身長と負の関係:Am J Cardiol. 2002; 89: 399-402. PubMed
  • 内皮機能の評価法であるflow-mediated dilation(FMD)はnitroglycerin-induced dilation(NID)と正の関係にあり,FMDおよびNIDと24時間収縮期血圧,総頸動脈/身長,最小前腕血管抵抗とは負の関係:Am J Hypertens. 2002; 15: 398-404. PubMed
  • 左室肥大の心電図基準における民族差:Am J Hypertens. 2002; 15: 663-71. PubMed
  • 左室重量低下あるいは壁厚を退縮させる降圧治療は降圧効果とは独立して拡張期充満の改善と関係がある:Circulation. 2002; 105: 1071-6. PubMed
  • 降圧治療により左室心筋重量が減少し左室中壁shorteningおよび収縮性が増加し,左室機能がやや低下し1回拍出量が有意に増加した:Circulation. 2002; 105: 227-32. PubMed
  • losartanは収縮期高血圧および心電図上LVH例において,atenololよりも有効であることが示唆される:JAMA. 2002; 288: 1491-8. PubMed
  • 糖尿病併発例(1195例)でもlosartanはatenololよりも有効:平均血圧はlosartan群146/79mmHg,atenolol群148/79mmHg。一次エンドポイントは103/586例 vs 139/609例(RR 0.76, 95%CI 0.58-0.98, p=0.031),心血管死は38例 vs 61例(0.63, 0.42-0.95, p=0.028),全死亡は63例 vs 104例(0.61, 0.45-0.84, p=0.002):Lancet. 2002; 359: 1004-10. PubMed
  • 女性は高収縮期左室機能の独立した予測因子である:Am J Cardiol. 2001; 87: 980-3. PubMed
  • 冠動脈疾患(CAD)と左室構造および機能不全との関係:Am J Cardiol. 2001; 88: 646-50. PubMed
  • LVHを有する長期にわたる高血圧例において,最大運動能の低下は総頸動脈の伸展性低下および酸素予備能(oxygen reserve)の低下と関連している:Am J Hypertens. 2001; 14: 1205-10. PubMed
  • 収縮期血圧(SBP)は拡張期血圧(DBP)よりも高血圧例における心臓標的臓器障害の強いリスク因子である:Am J Hypertens. 2001; 14: 768-74. PubMed
  • スクリーニング時とベースライン時に持続して心電図所見でLVHの例は左室心筋重量が大きく,心エコー検査でもLVHのものが多い。このことは本例は続けて起こるイベント発症,死亡の高リスク例であることを示唆している:Am J Hypertens. 2001; 14: 775-82. PubMed
  • 心電図ストレインは解剖学上のLVHのリスク上昇と関連(CHDの相対リスク;RR5.14,非CHDのRR2.91):J Am Coll Cardiol. 2001; 38: 514-20. PubMed
  • 肥満の影響:Hypertension. 2000; 35: 13-8. PubMed
  • 左室肥大および求心性リモデリングの定義に使用される指数化の方法,左室重量のpartition values,相対壁厚の高血圧患者における左室肥大罹患に及ぼす影響:Hypertension. 2000; 35: 6-12. PubMed

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収載年月1999.09
更新年月2015.07