循環器トライアルデータベース

FRISC II
Fragmin and Fast Revascularization during Instability in Coronary Artery Disease

目的 (1)不安定冠動脈疾患を有する非侵襲治療群において,抗凝固薬低分子量 heparin dalteparinの長期投与効果を検討。
一次エンドポイントは死亡あるいは心筋梗塞(MI)。
(2)不安定冠動脈疾患(CAD)患者において,早期侵襲療法と非侵襲療法の効果を比較検討。
コメント 低分子量heparinのdalteparinが不安定狭心症患者において,死亡,心筋梗塞,血行再建術の必要性などのリスクを低下させる効果は,3か月後の成績ではプラセボと有意差はなかったが,少なくとも1か月間は有効であった。この効果は侵襲的治療を待機する患者にとって,イベントのリスクを低下させるのに有効である。一方,TIMI 11Bでは低分子量 heparinのenoxaparinを不安定狭心症に投与し,40日間続けてプラセボと差がなかったことから,本トライアルはTIMI 11Bとは異なった結果となった。(中村中野永井
デザイン 無作為割付け,二重盲検,多施設(スカンジアナの58施設),factorial,intention-to-treat解析。
期間 (1)(2)とも6か月。
対象患者 虚血の症状を有する者。
(1)2267例。67歳(中央値)。
(2)2457例。66歳(中央値)。
治療法 (1)dalteparinをオープンラベルで12時間ごとに120IU/kg(最大10000IU)を5日以上皮下注射後,dalteparin群:<80kgの女性,<70kgの男性は5000IU×2回/日,それ以上の体重の者は7500IU×2回/日皮下注射,あるいはプラセボ群に割付け。この治療を3か月継続。
(2)侵襲群(1222例):オープンラベルでのdalteparin投与から7日以内に冠動脈造影し,血管径の70%以上の閉塞がみられる全例に血行再建術を推奨。CABG(3枝あるいは左主冠動脈病変),PTCA(1~2枝疾患)。非侵襲群(1235例)は(1)に同じ。
結果 (1)3か月後の一次エンドポイントの発生率はdalteparin群6.7%,プラセボ群8.0%と有意な低下はみられなかった[リスク比0.81,95%信頼区間(CI)0.60-1.10,p=0.17]。30日の時点では低下は有意であった(3.1% vs 5.9%,リスク比0.53,95%CI 0.35-0.80,p=0.002)。全コホートで3か月後の死亡,MI,あるいは血行再建率は,29.1% vs 33.4%,リスク比0.87(95%CI 0.77-0.99,p=0.031)。最初の効果は6か月の時点で持続しなかった。
(2)一次エンドポイントの発生の低下率は侵襲群で9.4%,非侵襲群で12.1%(リスク比0.78,95%CI 0.62-0.98,p=0.031)。MIのみでみると,低下率は各7.8% vs 10.1%(リスク比0.77,95%CI 0.60-0.99,p=0.045)と有意に低下したが,死亡率の低下は1.9% vs 2.9%(リスク比0.65,95%CI 0.39-1.09,p=0.10)で有意ではなかった。狭心症の症状および再入院は侵襲群が非侵襲群の半分であった。
文献
  • [main]
  • (1) Fragmin and fast revascularization during instability in coronary artery disease (FRISC II) investigators: Long-term low-molecular-mass heparin in unstable coronary-artery disease; FRISC II prospective randomised multicentre study. Lancet. 1999; 354: 701-7. PubMed
  • (2) Fragmin and fast revascularization during instability in coronary artery disease (FRISC II) investigators: Invasive compared with non-invasive treatment in unstable coronary-artery disease; FRISC II prospective randomised multicentre study. Lancet. 1999; 354: 708-15. PubMed
  • [substudy]
  • トロポニンI上昇(>0.01μg/L)例は6週間後に48%,6か月後に36%,6週間後・3か月後・6か月後の3回では26%にみられ,死亡を予測した:Circulation. 2007; 116: 1907-14. PubMed
  • growth differential factor(GDF)-15の中程度(1200~1800ng/L)上昇例は770例(37.0%),非常に(>1800ng/L)上昇したのものは493例(23.7%)。GDF-15の上昇は非侵襲治療群で一次エンドポイントの独立した予測因子であったが,早期侵襲治療群では違った。早期侵襲治療群では>1800ng/L例,1200~1800ng/L例で一次エンドポイントが低下したが,<1200ng/Lでは低下はみられなかった:Circulation. 2007; 116: 1540-8. PubMed
  • (2) 5年後の結果:一次エンドポイントは早期侵襲群217例(19.9%) vs 非侵襲群270例(24.5%),リスク比0.81(95%信頼区間0.69~0.95,p=0.009),死亡率は9.7% vs 10.1%(p=0.693),MIは12.9% vs 17.7%(p=0.002)と侵襲群の有効性は持続した。同群の有効性は男性,非喫煙例,2つ以上の危険因子を有する症例に限られた:Lancet. 2006; 368: 998-1004. PubMed
  • 非ST上昇型急性冠症候群において,N-terminal part of the pro-B-type natriuretic peptide (NT-proBNP)の初期の上昇は主に可逆性である。慢性左室機能低下は可逆性を低下させ,急性心筋傷害を上昇させる。比較的安定している慢性期のNT-proBNPは急性期のものより死亡と相関する:J Am Coll Cardiol. 2005; 45: 533-41. PubMed
  • 入院時のECGによる虚血の重症度で,侵襲的治療が最も有効な症例を同定できる:J Am Coll Cardiol. 2003; 41: 905-15. PubMed
  • 医療コスト:Eur Heart J. 2002; 23: 31-40. PubMed
  • ECGサブスタディ:ST低下は3枝病変/左主幹部病変およびその後の心イベントの発症増加と関係がある:Eur Heart J. 2002; 23: 41-9. PubMed
  • 本試験での侵襲術へのクロスオーバーのための負荷試験基準をVANQWISH試験における適合例に適用して検討すると,本試験の過度に厳格なリスク層別基準は,同定できた例と同数の侵襲術の冠動脈疾患(CAD)を同定できなかった可能性がある:J Am Coll Cardiol. 2002; 39: 1601-7. PubMed
  • 早期に積極的に血管再建術を施行した女性の長期アウトカムは男性に比べて良好であった:J Am Coll Cardiol. 2002; 40: 245-50. PubMed
  • 女性の症候性および/あるいは不安定CAD例は男性より高齢であったが,男性に比べCADの重症度は低く予後も良好であった。しかし男性で施行後のイベントの発生抑制効果を認めたが,女性では認められなかった:J Am Coll Cardiol. 2001; 38: 41-8. PubMed
  • トロポニンTの予測能評価:J Am Coll Cardiol. 2001; 38: 979-86. PubMed
  • 1年後の転帰:死亡率は侵襲群27例(2.2%),非侵襲群48例(3.9%)。MI発症率は8.6% vs 11.6%(p=0.015)。死亡あるいはMIの発生率は10.4% vs 14.1%。侵
    襲群は100症例中1.7例を救い,非致死性MI2例を予防,再入院20例を抑制:Lancet. 2000; 356: 9-16. PubMed

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EBM 提供:大日本住友製薬 「循環器トライアルデータベース
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収載年月2000.09
更新年月2007.11