循環器トライアルデータベース

CHS
Cardiovascular Health Study

目的 65歳以上の高齢者における冠動脈心疾患(CHD)および脳卒中の発症と経過の関連因子を同定し,高齢者において予防可能な危険因子を同定する。
コメント 高齢者におけるCHDや脳卒中のリスク因子としては,臓器障害の発見が重要であることを示した。(寺本
デザイン 疫学。
期間 1989年に開始,3年ごとに追跡調査。
参加者 5000例。65歳以上で,4つの年齢層(65~69歳,70~74歳,75~79歳,80歳以上)での危険因子の検討に十分な各層の数とした。
1992年6月~'93年5月に687例のアフリカ系アメリカ人を追加登録した。
調査方法 米国の4つのコミュニティから各1250例ずつ登録。ベースラインで,高血圧,高コレステロール血症,耐糖能異常といった心血管疾患(CVD)のリスク因子,頸動脈アテローム,左室肥大,一過性虚血といった subclinical 疾患,明白なCVDの有無,重症度を評価した。3年ごとの追跡は,6,18,30か月目の電話連絡,1,2年目の外来を経て3年目にベースライン時の広範な身体検査および生検を再度行う。この総合検査は3年ごとに実施。
結果 下記参照
CHSホームページ
http://www.chs-nhlbi.org/

[主な結果]
  1. HFpEFとHFrEFの生涯リスク:HFrEFは男性のほうが,HFpEFは非黒人で高い。心筋梗塞既往例ではいずれのリスクも高かった。
    生涯リスクが20~46%と推定されている心不全について拡張性心不全(HFpEF:EF≧45%),収縮性心不全(HFrEF:EF<45%)別に生涯リスクを評価するため,CHSと大規模コホート研究MESAの>45歳・非心不全例を統合解析した(12,417例;男性44.8%,黒人22.2%)。
    11.6年(中央値)の追跡で心不全は2,178例,うちHFpEFは726例,HFrEFは561例。
    45歳時における90歳までの心不全全体の生涯リスクは男性が女性より高く(27.4% vs 23.8%),HFrEFの生涯リスクも男性が女性の1.8倍だったが(10.6% vs 5.8%),HFpEFの生涯リスクに性差はなかった(女性ではHFpEFリスクがHFrEFリスクより高いが, 男性では両者に差はない)。一方,人種による解析では,心不全全体のリスクは黒人より非黒人が高く(25.9% vs 22.4%),HFpEFリスクも非黒人で約1.5倍高かった(11.2% vs 7.7%)が,HFrEFリスクに差はなかった。また,心不全診断の前に心筋梗塞を発症した者は非発症者にくらべ, HFpEFリスクが2.5倍,HFrEFリスクが4倍高かった。これらに年齢による違いはみられなかった。
    競合リスク調整生涯リスクはHFpEF:10.6%(非調整12.2%);男性10.4%(12.6%),女性10.7%(11.9%),黒人7.7%(9.6%),非黒人11.2%(12.7%),HFrEF:7.9%(9.0%);10.6%(12.6%), 5.8%(6.5%), 7.7%(9.0%), 7.9%(8.9%)(Pandey A et al: Sex and race differences in lifetime risk of heart failure with preserved ejection fraction and heart failure with reduced ejection fraction. Circulation. 2018; 137: 1814-23.)。 PubMed
  2. 80歳以上での無症候性CVDと死亡,認知症,CADリスク-≧10年後の発症はCADより認知症のほうが多い。CACは死亡,CAD,心筋梗塞の決定因子。CACスコアが低い白人女性は認知症リスクが低い。
    CHS-Cognition Study(CHS-CS;ピッツバーグで1998・’99年に開始)参加者532人(平均80歳)において,無症候性心血管疾患(CVD)(冠動脈カルシウム[CAC]Agatstonスコア,頸動脈内膜中膜複合体厚,狭窄,足関節上腕血圧比[ABI])と認知症,冠動脈疾患(CAD),全死亡の関係を評価(追跡は2014年まで;平均93歳)。CACスコアを測定したCAD非既往者は311人。36%がスコア>400で,白人はアフリカ系アメリカ人より,男性は女性よりスコアが高かった。
    [全死亡]死亡原因の25%がCAD,脳卒中は6%。死亡例の64%が認知症診断例であった。CACスコアは白人男性とアフリカ系アメリカ人女性で全死亡と有意に関連。全例でCAC>400は<10とくらべ独立した有意な全死亡の予測因子。その他に年齢,脳の白質病変グレードも予測したが,古典的危険因子や身体活動は予測しなかった。
    [認知症]CACスコアは白人女性のみで認知症と有意に関連(スコア0の発症率は>400の約1/3;傾向p=0.04)。初回CAC測定から認知症発症まで,スコア0例は7.1年,>400例は5.2年。その他に白人女性では低ABIが関連し,白人男性では最大狭窄率が負の関係であった。
    [CAD,CVD]発症平均年齢は85.0歳,発症はベースラインから約6年(中央値)後。黒人男性を除き,CADはCACの程度と直接的に関連し,CADを心筋梗塞に限定しても同様の結果であった。CACスコアと冠動脈石灰化数は強く相関し,白人ではCADと石灰化数は有意に関連した。
    年齢別発症率は,全年齢層の女性,高齢男性で認知症のほうがCADより高かった(例:ベースライン時81~85歳白人女性の2011・’12年の認知症発症率:126/1,000人・年,2013・’14年のCAD発症率:52/1,000人・年)(Kuller LH et al: Subclinical cardiovascular disease and death, dementia, and coronary heart disease in patients 80+ years. J Am Coll Cardiol. 2016; 67: 1013-22.)。 PubMed
  3. 余暇時間の身体活動(LTPA),BMIと心不全リスクに用量依存性の独立した強い関連が示された。高LTPA,低BMIとリスク低下の関連はHFpEFのほうがより強かった:J Am Coll Cardiol. 2017; 69: 1129-42 →詳しく
  4. 診療報酬請求データの診断コードで特定する臨床イベント―陽性適中率は高いが低感度:Circulation. 2016; 133: 156-64. Epub 2015 Nov 4. →詳しく
  5. n-6 PUFAと死亡 - リノール酸は全死亡,CAD死と負の関係にあったが,その他のn-6 PUFAとの関連は示されず:Circulation 2014; 130: 1245-53. →詳しく
  6. 一般住民における洞不全候群-発生率は0.8/1,000人・年で,加齢とともに増加。CVDの危険因子と関連:J Am Coll Cardiol. 2014; 64: 531-8. →詳しく
  7. 身体活動と自律神経機能-71歳における身体活動量の多さはその後の良好な心拍変動と関連する:Circulation. 2014; 129: 2100-10. →詳しく
  8. フェチュイン-AとCVDの関連-75歳の一般住民では2型糖尿病,インスリン抵抗性の有無により異なる:Daibetes Care. 2013; 36: 1222-8. →詳しく
  9. 長鎖一価不飽和脂肪酸とうっ血性心不全(CHF)-さまざまな食物由来の血中エルカ酸(22:1),ネルボン酸(24:1)濃度の上昇はCHFと関連。心毒性の可能性が示唆される:Circulation. 2013; 127: 1512-21. →詳しく
  10. 心不全と老年症候群-新規に心不全と診断された高齢(79.7歳)患者では老年症候群も診断後の入院リスク因子:J Am Coll Cardiol. 2013; 61: 635-42. →詳しく
  11. 糖尿病発症時に正常体重だった成人は,過体重/肥満だったものよりも死亡リスクが高い:JAMA. 2012; 308: 581-90 →詳しく
  12. 高齢者(78歳)では線維芽細胞増殖因子-23は全死亡,心不全,CVDと独立して関連:J Am Coll Cardiol. 2012; 60: 200-7. →詳しく
  13. 高齢者(74.1歳)で長鎖オメガ3多価不飽和脂肪酸,DHAにより心房細動リスクが低下:Circulation. 2012; 125: 1084-93. →詳しく
  14. 心不全既往のない高齢患者において,ベースライン時の心トロポニンTおよびその後の変化は心不全発症,心血管死と有意に関連:JAMA. 2010; 304: 2494-502 →詳しく
  15. 65歳以上でNT-proBNPは心房細動の独立した予測因子:Circulation. 2009; 120: 1768-74. →詳しく
  16. 高齢者においてCKDはABI低値だけでなく高値とも関連する:J Am Coll Cardiol. 2009; 54: 1176-84. →詳しく
  17. 10年間の慢性腎臓病(CKD)発症予測モデルを作成:Arch Intern Med. 2008; 168: 2466-73. →詳しく
  18. 高齢者において,軽度~中等度の身体活動,特に余暇時間の活動,歩行はAFの新規発症を抑制する:Circulation. 2008; 118: 800-7. →詳しく
  19. マグロやその他の魚およびオメガ-3脂肪酸の習慣的な摂取は心拍数の変動要因,特に迷走神経活性,圧受容体,洞房結節の機能と関係がある:Circulation. 2008; 117: 1130-7. →詳しく
  20. 1992~’93年の腹部大動脈スクリーニング(4734例)による腹部大動脈瘤は416例:Circulation. 2008; 117: 1010-7. →詳しく
  21. 平均5年間の追跡で大動脈硬化のおよそ9%が大動脈狭窄を発症:J Am Coll Cardiol. 2007; 50: 1992-8. →詳しく
  22. CKD(推定糸球体濾過量:15~60mL/分/1.73m²)におけるフラミンガムリスクスコアの予測能は低い:J Am Coll Cardiol. 2007; 50: 217-24 →詳しく
  23. 頸動脈エコーでアテローム性動脈硬化が検出できる症例においては,CRPの上昇と心血管疾患および全死亡のリスク増加は関連した:Circulation. 2007; 116: 32-8. →詳しく
  24. 上腕動脈の血流依存性血管拡張(flow-mediated dilation:FMD)は心血管疾患発症を予測するが,従来の心血管疾患の危険因子の付加的予測精度は期待できない:Circulation. 2007; 115: 2390-7. →詳しく
  25. 駆出率が正常な心不全例167例は健常例,高血圧例に比べより高齢,肥満,アフリカ系アメリカ人が多く,糖尿病,CHD,貧血の罹患率は高かった:J Am Coll Cardiol. 2007; 49: 972-81. →詳しく
  26. リノレイン酸のトランス型異性体であるtrans-18:2高値およびオレイン酸のトランス異性体であるtrans-18:1低値は,致死的虚血性心疾患,突然心臓死のリスク上昇と関連:Circulation. 2006; 114: 209-15. →詳しく
  27. 追跡期間5.9年(中央値)で死亡352例でうち41%が心血管死:Diabetes Care. 2006; 29: 2012-7. →詳しく
  28. 非飲酒例に比べ,1~6杯/週の飲酒例のうっ血性心不(CHF)のハザード比(HR)は0.82(p=0.05),7~13杯/週の飲酒例は0.66(p=0.01)と低い:J Am Coll Cardiol. 2006; 48: 305-11. →詳しく
  29. 1989~2001年・追跡期間8.2年(中央値):Circulation. 2006; 113: 2177-85. →詳しく
  30. 登録時に心血管疾患がなく降圧薬,脂質低下薬を服用していなかった2175例・追跡期間4.1年(中央値)の結果:Diabetes Care. 2005; 28: 882-7. →詳しく
  31. 追跡期間11.1か月(中央値)で死亡2311例:Circulation. 2006; 113: 388-93. →詳しく
  32. ベースライン時にC-reactive protein(CRP)が>3mg/Lだったものは26%で,10年間にCHDを発症したのは547例:Circulation. 2005; 112: 25-31. →詳しく
  33. 1992~'93年に調査した4637例の結果:N Engl J Med. 2005; 352: 2049-60. →詳しく
  34. 慢性腎疾患例において,従来の危険因子は,新規の危険因子よりも心血管死との相関度が高い:JAMA. 2005; 293: 1737-45. →詳しく
  35. マグロあるいはその他の焼き魚(broiled),蒸し焼き(baked)にした魚の摂取は心房細動の低下と関連したが,魚のフライ,サンドイッチは関連しなかった:Circulation. 2004; 110: 368-73. →詳しく
  36. (4種類の構造のcarotid geometric patterns:CGP)による動脈肥厚は,年齢,通常のリスク因子,総頸動脈内膜-中膜肥厚とは独立して,心血管疾患と関連する:J Am Coll Cardiol. 2004; 43: 187-93. →詳しく
  37. 心電図,心エコーでの左室心筋重量の増加は左室機能低下の進展の独立したリスク因子である:J Am Coll Cardiol. 2004; 43: 2207-15. →詳しく
  38. 65歳以上の糖尿病例において,空腹時血糖値の上昇はうっ血性心不全のリスク因子である:J Am Coll Cardiol. 2004; 43: 2236-41. →詳しく
  39. 動脈stiffness(硬さ)は、リスク因子(インスリン抵抗性症候群,総頸動脈の内膜-中膜肥厚,心拍数,身体活動に関連する)と正の関係にある:Am J Hypertens. 2002; 15: 16-23. →詳しく
  40. 痴呆あるいは軽度の認知障害(mild cognitive impairment:MCI)682例中,MCI(320例)の43%が,痴呆(362例)の75%が前月に神経精神病学的症状を発症:JAMA. 2002; 288: 1475-83. →詳しく
  41. Mモード心エコー図検査値は無症候性疾患の重要なマーカーで,CVD特にCHFおよびCHDの独立した予測情報である:Am J Cardiol. 2001; 87: 1051-1057. →詳しく
  42. T軸変位は潜在疾患の容易に数量化できるマーカーで,CHDイベント発症リスクの独立した指標である:Am J Cardiol. 2001; 88: 118-123. →詳しく
  43. 血圧は冠動脈および脳血管リスクに強く直接関係していたが,収縮期血圧(SBP)は心血管イベントの最大予測因子である:Arch Intern Med. 2001; 161: 1183-1192. →詳しく
  44. 冠動脈石灰化は高齢者におけるCVDを予測できる可能性がある:Circulation. 2001; 104: 2679-2684. →詳しく
  45. CHF発症例のおよそ半分が正常な左室機能あるいはボーダーラインにあった:J Am Coll Cardiol. 2001; 37: 1042-1048. →詳しく
  46. うつ症状はCHD進展と全死亡の独立したリスク因子である:Circulation. 2000; 102: 1773-1779. →詳しく
  47. クラミジア肺炎病原体,ヘルペス単純ウイルスタイプ1,サイトメガロウイルスとMI,CHD死の関連:Circulation. 2000; 102: 2335-2340. →詳しく
  48. 全MIのうち無症候性MIは22.3%。無症候性MIの独立した予測因子は,狭心症およびうっ血性心不全を有していないこと:J Am Coll Cardiol. 2000; 35: 119-126. →詳しく
  49. 平均追跡期間5.5年でうっ血性心不全(CHF)は597例と発症率が高かった:J Am Coll Cardiol. 2000; 35: 1628-1637. →詳しく
  50. 耐糖能異常患者における心血管疾患についてADAとWHOの糖尿病基準を比較:Lancet. 1999; 354: 622-625. →詳しく
  51. 心筋梗塞(MI)あるいは脳卒中の相対リスクは頸動脈の内膜-中膜の厚さと相関する:N Engl J Med. 1999; 340: 14-22. →詳しく
  52. 大動脈弁の異常が増加するに従い全死亡および心血管死亡率は段階的に上昇:N Engl J Med. 1999; 341: 142-147. →詳しく
  53. The cardiovascular health study; design and rationale.:Ann Epidemiol. 1991; 1: 263-76. →詳しく

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収載年月2000.09
更新年月2018.07