循環器トライアルデータベース

ARIC
Atherosclerosis Risk in Communities Study

目的 アテローム性動脈硬化の原因を検討する試験であって,様々なリスク因子,治療,および人種,性,居住場所,罹患期間における臨床経過について検討。
コメント Circ Heart Fail. 2012; 5: 152-9.へのコメント
心不全の診断基準にはFRM基準が一般に用いられているが,この他にもModified Boston, NHANES,ESC基準などが報告されている。いずれも,疫学研究における心不全の診断基準として客観的に心不全を識別する目的で提案されていることを知っておく必要がある。ARIC研究の診断基準はADHFを識別する目的で導入されたため,症候,BNP,画像所見、治療反応性,共存疾患の有無が,その診断基準の要素となっており,その判定には継時的臨床データが必要であり,主観的判断も加味される。ADHF診断のゴールドスタンダードとすることには異論はないが,疫学研究に適しているとは言えない。他の診断基準が特異度にバラツキが見られるのは共存疾患が考慮されていなかったためであろう。また,ARIC基準の「慢性安定心不全」は収縮機能の保たれたHFpEFの多くが除外される可能性があり,決して完璧な診断基準とは言えない。(
デザイン prospective study,多施設(米国4コミュニティー)。
期間 2サイクル:1986年11月~'89年末で終了,その時点から次の3年間。
参加者 16,000例。45~64歳。
調査方法 米国の4つのコミュニティーで行われ次の3つのコホートから成る。
1.Jackson cohort:黒人のみ。頸動脈および膝窩動脈超音波スキャン。2.Lipid Labolatory:脂質,リポ蛋白,アポ蛋白測定。3.Hemostasis Laboratory:凝固,抗凝固,血小板および線溶活性の測定。冠動脈心疾患(CHD)の調査には調査居住地の35~74歳の住民における入院,死亡の再検討も加える。
結果 下記参照
ARICホームページ
http://www2.cscc.unc.edu/aric/

[主な結果]
  1. The ARIC investigators: The atherosclerosis risk in communities (ARIC) study; design and objectives. Am J Epidemiol. 1989; 129: 687-702. PubMed
  2. CVD非既往の一般住民において,身体活動(PA)の経時的な増加は心不全リスクの低下と関連。中年後期からのPA開始,増加でもリスクが低下した。
    PAの量的変化が心不全(HF)リスクに及ぼす影響を検討した。
    第1回(1987~’89年)および3回(1993~’95年)検診に参加した白人および黒人11,351人(平均年齢60歳,女性57%)を対象に,修正Baecke QuestionnaireによりPAを測定し,6年間の経時的変化を評価。PAは,米国心臓協会(AHA)の推奨に従い,推奨PA群(高強度の運動 ≧75分/週または中等度~高強度の運動 ≧150分/週),中等度PA群(高強度の運動 1~74分/週または中等度~高強度の運動 1~149分/週),低PA群(中等度または高強度の運動=0分/週)に分類した。主要評価項目は,第3回検診後2013年12月31日までに発症したHF(HFによる初回入院または死亡)。
    推奨PA群:ベースライン4,482人→第3回検診時4,733人,中等度PA群:2,885人→2,594人,低PA群:3,984人→4,024人。
    追跡期間中央値19年のHFは1,750例(入院1,693例,死亡57例)。第1回および第3回検診時とも推奨PA群だったものは低PA群にくらべHFリスクが最も低かった[ハザード比(HR)0.69; 95%信頼区間 0.60~0.80]。また,低PAから推奨PAに増加した場合にもHFリスクは低下した(0.77; 0.63~0.93)。この結果は,年齢(<65歳または≧65歳),人種,性別を問わず,一貫していた。低PAでは,第3回検診時までにPAが1SD(512.5 METs・分/週)増加するとHFリスクは11%低下した(0.89; 0.82~0.96)。さらに,無症候の心筋障害を示す高感度心トロポニンは,第1回および第3回検診時とも推奨PA群だったもので低く(オッズ比 0.61; 95%信頼区間 0.48~0.77),低PAから推奨PAに経時的に増加した場合にも同様の傾向が示された(0.81; 0.59~1.10)。一方,NT-proBNPとPAとの間には有意な関連は示されなかった(Florido R, et al: Six-year changes in physical activity and the risk of incident heart failure: ARIC Study. Circulation. 2018; 137: 2142-51.)。 PubMed
  3. 中年期(45~64歳)の危険因子保有数と23.5年後の脳のアミロイド沈着に関連がみられたが,老年期(67~88歳)の因子数とは関係しなかった。
    中年期の保有血管危険因子が老年期の脳のアミロイド沈着と関係するかを,PET検査で可視化する放射性医薬品florbetapirを使用して,3州の非認知症322人(平均年齢52歳,女性58%,黒人43%)の中央値23.5年追跡結果(76歳;67~88歳)から検証した(ARIC-PET Amyloid Imaging Study)。
    1987~9年の1回検診時に血管危険因子を評価,2011~’13年(第5回検診)にflorbetapir PETスキャンを実施し,5因子(BMI≧30kg/m²,現喫煙,高血圧,糖尿病,総コレステロール≧200mg/dL)の他,アポE遺伝子型,教育レベルなどを含む多変量解析を行った。
    加齢とともに保有危険因子数は増加した(1回→5回検診時の危険因子数0:20.2%→10.9%, 1:38.2%→25.5%, 2:28.9%→36.0%, 3:12.4%→24.5%)。アミロイド沈着例は,ベースライン時に危険因子を保有していなかったものが31%,≧2つ有していたものは61%で,保有危険因子数増加とアミロイドSUVR(standardized uptake value ratio)上昇の関係が示された(調整オッズ比2.88;95%信頼区間1.46~5.69)。1因子保有例のオッズ比は1.88。SUVR上昇との関係が顕著に示されたのはBMI≧30kg/m²(2.06)のみだった。人種,アポE遺伝子型の有意な影響はみられず,晩年期の保有因子数(≧2因子:1.66;0.75~3.69)との有意な関係はなかった(Gottesman RF et al: Association between midlife vascular risk factors and estimated brain amyloid deposition. JAMA. 2017; 317: 1443-50.)。 PubMed
  4. 高齢地域住民の82%は無症候の心不全危険因子を保有し,心不全の約70%がEF保持。心エコーによる拡張機能と長軸方向のストレインを加えると予後予測能は改善。
    第5回検診(2011~’13年)参加者6,118人(年齢中央値75.3歳,男性42%,黒人22%)において,ACC/AHA心不全病期分類の分布とその後の心不全による入院・死亡との関係を検証し(追跡期間中央値608日),心エコー上の新規左室評価指標の導入による予後予測能の変化を評価した。
    ステージ0(危険因子・器質的異常ともになし)は5%のみ,A(危険因子あり,無症候,器質的異常なし)は52%,B(無症候,器質的心疾患あり)30%,C1(症候性,器質的心疾患で入院歴なし)7%,C2(入院歴あり)6%で,C1,C2の約2/3はEF保持例だった。死亡・心不全による入院は194例で,病期が進行した人ほどリスクが高かった。ステージA・Bでは,左室器質的異常(肥大,拡大,壁運動異常,中等度以上の弁疾患),収縮機能(EF,長軸方向ストレイン[LS])・拡張機能(e’,E/e’,左房容積係数)異常はそれぞれ独立して心不全と関連。LSと拡張機能を従来の器質的評価,EFに加えると予後予測能が改善した。また,ステージBの定義にLSと拡張機能を加えると,ステージAの14%がBに再分類された(Shah AM et al: Heart failure stages among older adults in the community: the Atherosclerosis Risk in Communities Study. Circulation. 2017; 135: 224-40.)。 PubMed
  5. AF患者の CV危険因子保有率はAF診断の>15年前から高く,CV疾患有病率は診断前後に急速に上昇。よりCV高リスクに,より長期間曝露した人ほどAFリスクが高かった:Circulation. 2016; 135: 599–610. →詳しく
  6. 一般住民において心筋梗塞の>45%は無症候性で,予後不良と関連。発生率と予後には性差,人種差がみられた:Circulation. 2016; 133: 2141-8. →詳しく
  7. 一般住民において,DBP<70mmHg,とくに<60mmHgは潜在性心筋損傷,21年後のCAD・死亡と関連:J Am Coll Cardiol. 2016; 68: 1713-22. →詳しく
  8. 脂質値,CADとスタチン使用-2001年のATP III発表後に高リスク者へのスタチン投与が増加したことで,スタチン非投与者における脂質値とCADの関係が減弱した可能性が示される:Circulation. 2016; 133: 256-64. →詳しく
  9. NT-pro BNPの心不全リスク予測能と肥満-NT-pro BNPはBMIと負の関係ながら,肥満者でも心不全発症を予測:Circulation. 2016; 133: 631-8. →詳しく
  10. HF入院データに基づいたARICの新HF分類基準‐ARIC新分類を標準として,従来基準を比較すると,ARIC基準によるADHF入院例を中等度の感度で同定できたが,特異度はばらつきが大きかった:Circ Heart Fail. 2012; 5: 152-9. →詳しく
  11. hs-cTnTと高血圧,左室肥大-CVD非既往の非高血圧例において,hs-cTnTは特に正常血圧例における高血圧・左室肥大発症リスク例の同定に有用な可能性が示される:Circulation. 2015; 132: 825-33. →詳しく
  12. バイオマーカーと腹部大動脈瘤 -WBC,フィブリノゲン,D-ダイマー,cTnT,NT pro-BNP,高感度CRPと関連。保有マーカー数が多い症例ほど発症リスクが高い:Circulation. 2015; 132: 578-85 →詳しく
  13. フルクトサミン,グリコアルブミンとCV転帰-関連が示され,その関連度はHbA1cと同等:Circulation. 2015; 132: 269-77 →詳しく
  14. AFとSTEMI/NSTEMI‐AFはMI発症と関連。ただしこの関連はNSTEMIのみで,女性のほうが高リスク:Circulation. 2015; 131: 1843-50. →詳しく
  15. 前糖尿病・糖尿病と無症候性心筋傷害-独立して関連し,無症候性心筋傷害例では心血管リスクが上昇:Circulation. 2014; 130: 1374-82. →詳しく
  16. 一般住民における洞不全候群-発生率は0.8/1,000人・年で,加齢とともに増加。CVDの危険因子と関連:J Am Coll Cardiol. 2014; 64: 531-8. →詳しく
  17. 米国における脳卒中発症・死亡の傾向-いずれも2011年までの22.5年間で低下。発症は65歳以上,死亡は65歳未満で低下したが,性差,人種差はみられず:JAMA. 2014; 312: 259-68. →詳しく
  18. 肺機能,気道閉塞と心房細動(AF)-1秒量の低下および気道閉塞は17.5年間のAF発症と関連:Circulation. 2014; 129: 971-80 →詳しく
  19. 長鎖一価不飽和脂肪酸とうっ血性心不全(CHF)-さまざまな食物由来の血中エルカ酸(22:1),ネルボン酸(24:1)濃度の上昇はCHFと関連。心毒性の可能性が示唆される:Circulation. 2013; 127: 1512-21. →詳しく
  20. 糖尿病発症時に正常体重だった成人は,過体重/肥満だったものよりも死亡リスクが高い:JAMA. 2012; 308: 581-90 →詳しく
  21. 腎機能低下とアルブミン尿は他因子とは独立して心房細動発症と強く関連(10.1年追跡):Circulation. 2011; 123: 2946-53. →詳しく
  22. 中年において,高めの血圧は糖尿病発症の危険因子か?(アフリカ系アメリカ人,白人):Diabetes Care. 2011; 34: 873-9. →詳しく
  23. 一般住民において,HbA1cは糖尿病の診断に有用で,糖尿病リスクとの関連度は空腹時血糖値と同等だが,心血管疾患,全死亡リスクとの関連はより強い:N Engl J Med. 2010; 362: 800-11. →詳しく
  24. ランダム化試験(JUPITER)の結果を一般住民研究(ARIC)で評価:J Am Coll Cardiol. 2009; 54: 2388-95. →詳しく
  25. アメリカにおける冠動脈疾患死減少の理由の一つは,心筋梗塞の重症度低下だと思われる:Circulation. 2009; 119: 503-14. →詳しく
  26. 10年間の慢性腎臓病(CKD)発症予測モデルを作成:Arch Intern Med. 2008; 168: 2466-73. →詳しく
  27. 糖尿病患者ではアルブミン尿,網膜症を有していなくてもHbA1cは心血管疾患の危険因子とは独立してCKDの発症と強く相関:Arch Intern Med. 2008; 168: 2440-7. →詳しく
  28. 欧米の食事のパターン(肉,揚げ物)がメタボリックシンドローム(MetS)を促進することが示唆される:Circulation. 2008; 117: 754-61. →詳しく
  29. 糖尿病性網膜症は心不全発症リスクを独立して上昇させる:J Am Coll Cardiol. 2008; 51: 1573-8. →詳しく
  30. CKD(推定糸球体濾過量:15~60mL/分/1.73m²)におけるフラミンガムリスクスコアの予測能は低い:J Am Coll Cardiol. 2007; 50: 217-24. →詳しく
  31. 起立性低血圧は死亡を予測する。本相関を従来の心血管疾患の危険因子で説明できるのは一部にすぎない:Circulation. 2006; 114: 630-6. →詳しく
  32. 黒人において,有するメタボリックシンドロームの項目(高血圧,脂質代謝異常:低HDL-C,高トリグリセリド,glucose intolerance)の数と左室重量および左室壁厚要素とは強く相関:Circulation. 2005; 112: 819-27. →詳しく
  33. HbA1cは頸動脈内膜-中膜肥厚と独立して相関:Diabetes Care. 2005; 28: 1965-73. →詳しく
  34. 9年間の追跡結果:肺活量の低下は2型糖尿病の独立した予測因子である:Diabetes Care. 2005; 28: 1472-9. →詳しく
  35. 追跡9年間・6245例の心拍数変動(herat rate variability:HRV)と糖尿病および糖尿病発症前の代謝障害:Diabetes Care. 2005; 28: 668-74. →詳しく
  36. 網膜症は,冠動脈疾患,糖尿病,高血圧の既往のない例においても,うっ血性心不全の独立した予測因子である:JAMA. 2005; 293: 63-9. →詳しく
  37. Lp-PLA2,CRPと冠動脈疾患リスク:Circulation. 2004; 109: 837-42. →詳しく
  38. 心筋梗塞既往,糖尿病と心血管イベント:Circulation. 2004; 109: 855-60. →詳しく
  39. QTc,JTcと冠動脈疾患:Circulation. 2003; 108: 1985-9. →詳しく
  40. 腎機能とアテローム性CVD:J Am Coll Cardiol. 2003; 41: 47-55. →詳しく
  41. 食物線維,GIと糖尿病発症:Diabetes Care. 2002; 25: 1715-21. →詳しく
  42. アフリカ系アメリカ人のunprovoked 高カリウム血症はヨーロッパ系アメリカ人の5倍以上である:Am J Hypertens. 2002; 15: 594-9. →詳しく
  43. 貧血とCVD:J Am Coll Cardiol. 2002; 40: 27-33. →詳しく
  44. 網膜細動脈狭窄と冠動脈疾患:JAMA. 2002; 287: 1153-9. →詳しく
  45. 網膜異常と脳卒中:Lancet. 2001; 358: 1134-1140. →詳しく
  46. 脂質と冠動脈疾患:Circulation. 2001; 104: 1108-13. →詳しく
  47. 居住環境とCHD発症の関係:N Engl J Med. 2001; 345: 99-106. →詳しく
  48. PIA2 alleleを有する健常者のCADリスクは上昇しない:Circulation. 2000; 102: 1901-5. →詳しく
  49. 心拍変動の低下はCADおよび種々の原因による死亡リスクの上昇と相関:Circulation. 2000; 102: 1239-44. →詳しく
  50. 起立性低血圧と6年間のCAD発症との関連:Am J Hypertens. 2000; 13: 571-8. →詳しく
  51. 1987~'94年の心筋梗塞の重症度の傾向:Am Heart J. 2000; 139: 874-80. →詳しく
  52. 怒りとCADリスクの関連:Circulation. 2000; 101: 2034-9. →詳しく
  53. 1986~'89年に登録したアフリカ系アメリカ人(2646例)および白人(9461例)における9年間の2型糖尿病の発症:JAMA. 2000; 283: 2253-9. →詳しく
  54. 高血圧と動脈硬直(stiffness)の関連:Am J Hypertens. 2000; 13: 317-23. →詳しく
  55. 降圧薬(サイアザイド系利尿薬およびβ遮断薬)が2型糖尿病を進展させるか:N Engl J Med. 2000; 342: 905-912. →詳しく
  56. 脳梗塞のリスク因子としての止血機能のマーカー(CVD既往のない14700例):Circulation. 1999; 100: 736-42. →詳しく
  57. 非心血管疾患14170例:可溶性トロンボモジュリン濃度はCAD発症率とは逆相関を示した:Lancet. 1999; 353: 1729-34. →詳しく

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収載年月2000.09
更新年月2018.08