循環器トライアルデータベース

AASK
African American Study of Kidney Disease and Hypertension

目的 高血圧性腎症のアフリカ系アメリカ人において,降圧レベル(低値,通常)による腎症進展予防効果,および3種類の降圧薬の末期腎不全(ESRD)への進展予防効果を比較。
一次エンドポイントは糸球体濾過率(GFR)の変化率(GFR slope),ESRD,死亡。主要な治療効果比較は降圧レベルの低値 vs 通常,ramipril vs metoprolol, amlodipine vs metoprolol。
コメント すでにamlodipine群が脱落しており,今回の報告はmetoprololの結果も加えた結果である。本試験は対象がすべてアフリカ系アメリカ人であるという人種特性を考慮しなければならないことと,試験開始時にすでに降圧薬を服用しており,平均2.85剤ほどの多剤併用の結果であることである。特にCa拮抗薬はどの薬剤群でも60%以上の症例が服用しており,純粋な薬剤間の比較は困難であろうと思われる。ramiprilが良好な結果をもたらしたというよりも,利尿薬とramiprilの併用が良かったという可能性もある。
降圧レベルが低くても腎疾患の進展を遅らせることが出来ないという結果は,これまでのthe lower, the betterとは異なった結果であるが,J-カーブの存在を示唆したのではなく,すでに進行した高血圧腎硬化症ではある降圧レベル以下に下げても,さらなる臓器保護効果は得られないということか。(桑島
デザイン 無作為割付け,二重盲検(降圧薬比較の場合のみ),3×2 factorial,多施設(アメリカの21のclinical center),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は4.1年(中央値)。実施期間は1995年2月~2001年9月。
対象患者 1094例。18~70歳。GFRが20~65mL/分/1.73m²のアフリカ系アメリカ人。
除外基準:拡張期血圧(DBP)<95mmHg,糖尿病既往(空腹時血糖値≧140mg/dLあるいは随時血糖値>200mg/dL),尿蛋白/クレアチニン比(UP/Cr)>2.5など。
治療法 ACE阻害薬(ramipril)群436例:2.5~10mg/日,Ca拮抗薬(amlodipine)群217例:5~10mg/日,β遮断薬(metoprolol)群441例:50~200mg/日にランダム化。また,目標降圧DBP値が通常値群(102~107mmHg・554例),あるいは低値群(≦92mmHg・540例)に割付け。降圧目標値(平均102~107mmHgまたは≦92mmHg)に到達しない場合は,オープンラベルでfurosemide, doxazosin, clonidine, hydralazine, minoxidilを記載順に追加投与。
一次エンドポイントのGFR slopeは最初の3か月間のacute slopeとその後3か月のchronic slopeから決定した。
結果 2000年9月にamlodipine試験は中止され同群はオープンラベル治療とした。
達成血圧は降圧レベル低値群128/78mmHg,通常値群141/85mmHg。4年間のGFR slopeは低値群-2.21mL/分/1.73m²/年,通常値群-1.95mL/1.73m²/年で,両群間に有意差は認められず,低値群は試験開始時からの50%以上のGFR低下(あるいは≧25mL/分/1.73m²)+ESRD+死亡を有意に抑制しなかった[リスク低下2%, 95%信頼区間(CI)-22~21%, p=0.85]。
降圧薬間においてGFR slopeの有意差はみられなかった。しかし,ramipril群はmetoprolol, amlodipine群と比べて,50%以上のGFR低下(あるいは≧25mL/分/1.73m²)+ESRD+死亡が各22%(95%CI 1~38%, p=0.04), 38%(14~56%, p=0.004)有意に低下した。
amlodipine群とmetprolol群の間には有意差はみられなかった。
★結論★降圧レベル低値群では高血圧性腎硬化症の進展を抑制する効果は認められなかった。ACE阻害薬はβ遮断薬,Ca拮抗薬よりもGFR低下の予防に有効だと思われる。
文献
  • [main]
  • Wright JT Jr et al for the African American study of kidney disease and hypertension study group: Effect of blood pressure lowering and antihypertensive drug class on progression of hypertensive kidney disease: results from the AASK trial. JAMA. 2002; 288: 2421-31. PubMed
  • [substudy]
  • 蛋白尿が認められる患者では厳格な血圧管理により慢性腎臓病の進展が抑制される可能性が。
    ランダム化比較試験相終了後,全例の目標血圧を<130/80mmHg(当初は<140/90mmHgだったが,2004年にガイドライン勧告に従い変更)とするコホート相へ移行(2002年4月~2007年6月30日)。追跡期間はランダム化から8.8~12.2年。
    コホート相の平均血圧は,降圧レベル低値群131/78mmHg,通常値群134/78mmHgで,一次エンドポイントのリスクに有意な群間差はなかった(降圧レベル低値群のハザード比0.91;95%信頼区間0.77~1.08, p=0.27)。ただし,ベースライン時の尿蛋白高値例(尿蛋白/クレアチニン比>0.22;全例の約1/3)では厳格管理によりリスクが抑制される可能性が示され(0.73;0.58~0.93, p=0.01),尿蛋白低値例(≦0.22)では有意な群間差は認められなかった:N Engl J Med. 2010; 363: 918-29. PubMed
  • N-terminal proBNP(NT-proBNP)上昇例は心血管疾患リスクが高い。この関連度は蛋白尿が認められる例で強い。NT-proBNPの上昇と腎疾患の進展とは関連しない:Circulation. 2008; 117: 685-92. PubMed
  • 左室肥大は男性66.7%,女性73.9%と罹患率が高く,日中および夜間の高収縮期血圧,若年,低推定糸球体濾過量と関連したが,アルブミン尿とは関連なし:Hypertension. 2007; 50: 1033-9. PubMed
  • 降圧効果がGFR slopeあるいは主要な臨床転帰に及ぼす影響に薬剤間の違いはなかったが,ESRD+死亡,ESRDにおいては有意差が認められた(それぞれp=0.035, p=0.021)。amlodipine・通常降圧群(ESRD+死亡 0.087例/人・年,ESRD 0.064例/人・年)は他の群(ESRD+死亡 0.041~0.050/人・年,ESRD 0.027~0.036/人・年)よりリスクが高かった。amlodipine群では低値降圧はESRD+死亡(リスク低下51%)およびESRD(54%)のリスク低下と相関がみられたが,他の治療群ではみられなかった:Hypertension. 2005; 46: 44-50. PubMed
  • ベースライン時の尿蛋白とGFRはGFRの低下の予測因子:ベースライン時のGFRが10mL/分/1.73m2低いごとに,GFRの低下は0.38mL/分/1.73m2/年大きく,尿蛋白が2倍になるごとにGFR低下は0.54mL/分/1.73m2/年早くなる(どちらもp<0.001)。尿蛋白の最初の6か月間の変化が進展に関連し,この関連は尿蛋白<300mg/日の例で大きい:Arch Intern Med. 2005; 165: 947-53. PubMed
  • 2000年9月22日時点のramipril群 vs amlodipine群の報告。
    尿蛋白/クレアチニン>0.22(臨床上有意な尿蛋白:300mg/日に相当)例において,ramipril群はamlodipine群と比べGFRの平均低下が36%(2.02mL/分/1.73m2/年)遅く(p=0.006),GFRイベント,ESRD,死亡の発生率もramipril群で48%低下した(95%信頼区間20~66%, p=0.003)。
    全コホートでは,平均GFRの低下において群間に有意差は認められなかった(p=0.38)。しかし,登録時の多変量因子調整後は,ramipril群はamlodipine群と比べ3か月後のGFRイベント,ESRD,死亡の発生率が38%低下,GFRの低下は36%遅く(p=0.002),蛋白尿も少なかった(p<0.001)。
    ★結論★ramiprilはamlodipineと比べ,高血圧性腎不全患者における腎症および蛋白尿の進展を遅延し,蛋白尿を有さない患者にも有効である可能性がある:JAMA. 2001; 285: 2719-28. PubMed

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収載年月1999.09
更新年月2011.01