循環器トライアルデータベース

SHEP
Systolic Hypertension in the Elderly Program

目的 老年者収縮期高血圧に対する降圧治療が脳心血管合併症を予防するかを検討。
コメント JAMA. 1991; 265: 3255-64.へのコメント
老年者にしばしばみられながら,それまで治療の必要がないと思われてきた老年者の収縮期型高血圧に対する考え方を一変した画期的試験である。また多くのサブアナリシスが行われたのも特徴である。(桑島
高齢者高血圧に対する降圧薬治療の考え方を大きく変えた試験であり,世界中のガイドラインに大きな影響を及ぼした。Jカーブが存在しないこと,80歳以上の超高齢者でも降圧薬が有用なこと,また利尿薬治療が糖尿病合併例でも脳心合併症を予防することなどを発表したことでも意義が大きい。(Hansson)
デザイン 無作為割付け,プラセボ対照,二重盲検,多施設(16施設)。
期間 追跡期間は平均4.5年。
登録期間は1985年3月1日~'88年1月15日。
対象患者 4736例。60歳以上。収縮期血圧が160~219mmHgかつ拡張期血圧が90mmHg未満。
治療法 利尿薬chlorthalidone群(2365例)とプラセボ群(2371例)に割付け。実薬群はchlorthalidone 12.5mg/日投与。降圧が不十分な場合は倍量投与し,それでも降圧不十分ならβ遮断薬atenolol 25~50mg/日を投与。atenololが禁忌の場合,reserpine 0.05mg/日を投与。
結果 5年間の平均血圧は実薬群143/68mmHg,プラセボ群で155/72mmHg。脳卒中の発生率は実薬群5.2%,プラセボ群8.2%で相対リスクは0.64。非致死性心筋梗塞(MI)および冠動脈死の相対リスクは0.73,主要な心血管疾患発症は0.68,全死亡では0.87でいずれも実薬群で有意に少なかった。老年者の収縮期高血圧は降圧薬治療により脳卒中,MI,総死亡いずれも有意に予防できる。
文献
  • [main]
  • SHEP cooperative research group: Prevention of stroke by antihypertensive drug treatment in older persons with isolated systolic hypertension; final results of the systolic hypertension in the elderly program (SHEP). JAMA. 1991; 265: 3255-64. PubMed
  • [substudy]
  • 受診毎血圧変動とCVD死-降圧治療群で17年後のCVD死と有意に関連。
    受診毎血圧変動(visit-to-visit blood pressure variability: VVV)が長期心血管疾患(CVD)死に及ぼす影響,さらにその関係に降圧薬のアドヒアランス不良が介在することを検証するために,全例(平均年齢72歳,女性57%)において追跡期間をランダム化から2年後まで(period I:VVV確定期;平均15回受診)とその後(period II:CVD観察期)にわけて検討した結果(追跡期間17年):VVVの関連変数として選択した交絡因子は,治療群,性別,年齢,血清クレアチニン,喫煙,糖尿病,BMI,左室不全,HDL-C。
    収縮期血圧(SBP)の変化(ベースライン時→5年後)は,chlorthalidone群:170.3→143mmHg,プラセボ群:170.1→155mmHgで,VVVはchlorthalidone群のほうが有意に大きかった(p<0001)。
    17年後のCVD死は,chlorthalidone群のほうが13.8%低かった(665例[28.1%] vs 730例[30.8%]:調整ハザード比0.874;95%信頼区間0.783~0.977, p=0.237)。交絡因子で調整後,chlorthalidone群でVVVはCVD死と有意に関連したが,プラセボ群では有意な関連はみられなかった。またperiod Iの平均SBPで調整後,VVVとCVD死の関連は,SHEPコホート全体(p<0.001)およびchlorthalidone群(p=0.001)では有意だったが,プラセボ群では有意な関連はなかった。
    両群とも平均服用錠剤数でみたアドヒアランスは良好で,CVD死への有意な影響はみられなかった。
    VVVを4群(<40, 40~<60, 60~<80, ≧80mmHg)に層別すると,chlorthalidone群ではVVVの増加に伴いCVD死が増加した(<40mmHg群:16.0%, ≧80mmHg群:30.1%;p<0.001)が,プラセボ群での上昇はみられなかった:J Clin Hypertens. 2013; 16: 34-40. PubMed
  • 4.5年間のchlorthalidone段階的治療により22年後の平均余命が延長。
    全参加者(ベースライン時の平均年齢71.6歳)に4.5年の試験終了後も降圧治療を受けるようにアドバイスした:chlorthalidone群がプラセボ群と比べ獲得した平均余命は,全死亡105日(95%信頼区間-39~242, p=0.07),心血管死158日(36~287, p=0.009)。これは1か月の降圧治療で余命がおよそ1日延長したことになる。
    chlorthalidone段階的降圧治療群はプラセボ群に比べ心血管死回避の生存率が高かったが(ハザード比0.89, p=0.03),全死亡回避の生存率に両群間差はなかった(p=0.42)。
    同群の死亡は1,416例(59.9%),プラセボ群は1,435例(60.5%)で両群間差はなかったが,心血管死は28.3% vs 31.0%でchlorthalidone群のほうが少なかった。
    生存曲線解析で生存率が70パーセンタイルに達するまでの期間は,心血管死回避生存率ではchlorthalidoneのほうが1.41年(17.81年,16.39年)長く(p=0.01),全死亡回避生存率は0.56年長かった(11.53年 vs 10.98年,p=0.03):JAMA. 2011; 306: 2588-93. PubMed
  • SHEP Extension (SHEP-X) Study(本試験[4.7年追跡]終了後,2000年まで14.3年追跡(post hoc analysis):心房細動発症例で全死亡率,心血管死亡率が有意に上昇。
    平均4.7年間の追跡で心房細動(AF)が98例(2.06%)発症したが,治療群間に有意差はなかった(実薬群1.82%,プラセボ群2.32%, p=0.2)。AF発症例は非発症例に比べ,ベースライン時に高齢でECG上の異常が多く,追跡期間中の収縮期血圧が有意に高かった。
    4.7年後のAF発症例の死亡率:全死亡21例(21.43%) vs 非発症例434例(9.36%);ハザード比[HR]3.44(95%信頼区間2.18~5.42),総心血管死:7例(7.14%) vs 195例(4.20%); HR 2.39(1.05~5.43)。
    14.3年後のAF発症例の死亡率:全死亡70例(71.43%) vs 1920例(41.40%); 2.33(1.83 ~2.98),総心血管死:33例(33.67%) vs 935例(20.16%); 2.21(1.54~3.17)。
    AF発症例は全心筋梗塞(相対リスク1.88),非致死的心筋梗塞(2.09)のリスクも上昇した:Hypertension. 2008; 51: 1552-6. PubMed
  • SHEP Plus Extension:長期(二重盲検期間終了から119か月(中央値)追跡,試験開始からの平均追跡期間は14.3年)の心血管死亡率はchlorthalidone群(19%)がプラセボ群(22%)に比べ有意に低かった(補正ハザード比[HR]0.854, 95%信頼区間[CI]0.751~0.972, p<0.05)。ベースライン時の糖尿病は799例(chlorthalidone群384例[16.3%],プラセボ群415例[17.5%]),二重盲検追跡期間中に発症したものは258例(13.0%) vs 169例(8.7%)でchlorthalidone群の方が有意に多かった(p<0.0001)。ベースライン時の糖尿病例の心血管死亡率(HR 1.659),総死亡率(HR 1.510)は非糖尿病例に比べ上昇。プラセボ群で追跡期間中に糖尿病を発症した例(169例)では,心血管死亡率(HR 1.562)および総死亡率(HR 1.348)が有意に上昇したが,chlorthalidone群(258例)では有意な増加は認められなかった(心血管死HR 1.043,総死亡HR 1.151)。ベースライン時の糖尿病例におけるchlorthalidone治療は長期心血管死亡率(HR 0.688)および総死亡率(HR 0.805)の低下と強く相関した★結論★chlorthalidone治療は長期予後を,特に糖尿病例の予後を改善した。chlorthalidoneによる糖尿病新規発症例では心血管イベントの有意な増加はみられず,試験開始時に糖尿病だった例と比べ予後は良好である:Am J Cardiol. 2005; 95: 29-35. PubMed
  • 脈圧は心不全,脳卒中リスクの有用なマーカーであることが示唆される:Am J Cardiol. 2001; 88: 980-6. PubMed
  • 脈圧(PP)上昇と心不全進展の関係:PP上昇は平均動脈圧および急性心筋梗塞の発症と独立して,心不全リスクの上昇と関係する:Am J Hypertens. 2001; 14: 798-803. PubMed
  • 低立位SBPは転倒の独立した予測因子である:J Am Coll Cardiol. 2001; 38: 246-52. PubMed
  • 尿酸は心血管イベントの独立した予測因子である:J Hypertens. 2000; 18: 1149-54. PubMed
  • 降圧薬は出血性脳卒中および脳梗塞の両脳卒中の発症を低下。目標降圧(20mmHg以上の降圧,SBP<160mmHg)に達した例では脳卒中発症の低下が認められた:JAMA. 2000; 284: 465-71. PubMed
  • 代謝系:脂質,尿酸値,Kへの影響:Arch Intern Med. 1998; 158: 741-51. PubMed
  • 心不全:利尿薬がベースの降圧薬治療は心不全発症を有意に予防。相対リスク0.51。特に陳旧性MIを有する例で80%のリスク減少:JAMA. 1997; 278: 212-6. PubMed

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収載年月1999.09
更新年月2014.02