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Trial Review

2006.May 虚血性心疾患 Trial Review 2011.Jan>>Trial Review 2003.Feb>>

 虚血性心疾患  
DESに至るPCIの変遷,そして今
−mechanical solutionからmolecular solutionへ−
群馬大学医学部附属病院循環器内科(現:済生会前橋病院循環器内科) 中野明彦
東京大学大学院医学系研究科 循環器内科 永井良三
本レビューで紹介しているトライアル一覧
はじめに
1. bigger is better?
2. less invasive is better?
3. longer is better?
4. DES の現状と課題
おわりに
文 献
【主な略語一覧】
BMS: bare metal stent; ベアメタルステント
CABG: coronary artery bypass grafting; 冠動脈バイパス術
DCA: directional coronary atherectomy; 方向性冠動脈粥腫切除術
DES: drug-eluting stent; 薬剤溶出性ステント
ISR: instent restenosis; ステント内再狭窄
IVUS: intravascular ultrasound: 血管内エコー
LMT: left main coronary trank; 左主幹部
MACE: major adverse cardiac events; 主要有害心イベント
PCI: percutaneous coronary intervention; 経皮的冠動脈インターベンション
PTCA: percutaneous transluminal coronary revascularization; 経皮的冠動脈形成(術)
RCT: randomized clinical trial; ランダム化比較試験
TLR: targeted lesion revascularization; 標的病変再血行再建(術)
TVR: targeted vessel revascularization; 標的血管再血行再建(術)
はじめに
 1977年のAndreas Gruentzigによるfirst in man procedure[1]以来,PCIは間もなく30年の節目を迎える。その大半はバルーン治療(PTCA)の限界に対するmechanical solutionの展開に費やされきた。さまざまな性状のアテローマが混在する病変を圧排・伸展するだけのPTCAでは拡張不良や大きな冠動脈解離をきたすことも稀ではない。その結果,適応病変が一枝疾患あるいは平易な多枝疾患に限定されていたにも関わらず,初期の成功率は65〜85%に留まった。さらに3〜8%で急性冠閉塞を合併,その約10%がQ波梗塞となり,20〜30%に緊急バイパス手術が必要で,院内死亡率は全症例の1〜2%に達していた。また不十分拡張に加え,elastic recoil・negative remodeling・内膜平滑筋増殖による再狭窄率は35〜58%と報告された。
 1990年代になり,急性効果の改善と再狭窄率の抑制への期待を担ってDCAやBMSなどのニュー・デバイスが登場することになる。
1. bigger is better ?
 「(DCA・BMSの)手技に関わらず,残存狭窄の減少は合併症を増加させずに再狭窄を減じる効果がある」という“bigger is better hypothesis”がBaim,Kuntzらによって提唱され[2],PCIはより積極的(aggressive)に行う時代に突入した。
 DCAでは,PTCAに対する優位性を示せなかったCAVEATDB[3],CCAT[4]が最初のトライアルである。IVUSが導入される以前ということもあり,その特性を生かせず不十分切除が最大の要因と考えられた。(IVUS-guided) aggressive DCAを行ったBOATDB[5]ABACASDB[6]では,再狭窄率・再治療率が各々31.4%・17.1%(TVR),19.6%・15.2%(TLR)と“BMS並み”の成績であったが,これを超えることはできなかった。また煩雑で熟練を要するため手技の標準化が難しく,適応病変に制限があるなどの問題点が多く,施行施設・対象病変ともにかなり限定された。
 一方,大きな冠動脈解離からのbail-out(離脱)を目的に登場したBMSにより,再狭窄以外のPTCAの問題点−急性冠閉塞・拡張不良・elastic recoil・negative remodeling−は大幅に改善され,その手技の簡便さから使用頻度は急速に拡大した。再狭窄率低下への期待も大きかったが,STRESSDB[7]BENESTENTDB[8]では22〜32%とPTCAに比して10%程度の減少に留まり,やや肩透かしの結果であった。また抗凝固療法の併用が必須と信じられていたため,穿刺部合併症や入院期間延長の弊害が問題となった。
 この時代の画期的な研究としてMUSICDB[9]やColomboらの研究[10]が挙げられる。いずれもIVUS-guided stetntingの先駆けとなった研究である。IVUSを用いてより大きな内腔を得,MUSICでは再狭窄率・TLRを9.7%・4.5%にまで減じて“bigger is better”を実証してみせた。さらに,十分な拡張と抗血小板療法とで亜急性期の血栓閉塞が予防できることも示した。BMS後療法に関しては1996年に初めてのRCTであるISARの結果DB[11]が公表され,圧倒的に抗血小板療法が安全であることが示された。
 その後デザインの改良とも相まって,BMSはよりユーザーフレンドリーなデバイスとなったが,適応の拡大とともに弱点も浮き彫りになった。すなわち内膜増殖によるlate loss(≒50%)はいかんともしがたく,複雑病変では決してMUSICを超えることはなく,ISRという新たな「難病」を生む結果となった。この問題はAMIGO[12]に代表される“究極のbigger”となるDCA with BMSでも克服することができず,解決への模索が続けられた。
2. less invasive is better ?
 バルーン表面に3〜4枚接着したアテロトームの効果で“less vessel expansion”,“less vessel wall damage”,“less dissection”,“less plaque shift”,“more plaque reduction”を可能にしたカッティングバルーンは解離やリコイルを低減し,内膜増殖の抑制が期待された。しかしREDUCE[13],GLOBAL[14]などのRCTでの再狭窄率はPTCAと同等であった。より複雑な病変に活路を求めようという発想が生じ,レトロスペクティブな研究からもISRに対する効果も期待されたが,プロスペクティブなRCTであるRESCUTDB[15],REDUCE II[16]にて否定された。
3. longer is better ?
 こうしたmechanical approachの限界から,時代はlate lossを抑制するべくmolecular solutionに向けて動き出した。
 最初に登場した冠動脈内放射線療法(brachytheraphy)はβ線(32P,90Sr/90Y),γ線(192Ir)源の血管内照射により細胞の有糸分裂(mitosis)や細胞周期のM-phaseを抑え,特にBMS植え込み後の新生内膜の制御を試みた。β線ではPREVENT(最初のRCT)[17]INHIBIT(ISR)DB[18]START(ISR)DB [19],Beta-Cath(新規病変を対象とした多施設大規模試験)[20],γ線ではSCRIPPS(再狭窄病変,BMS植え込み後)DB[21]WRIST(ISR)DB[22]GAMMA-1(ISRに対する最初の多施設試験)DB[23]などが代表的なトライアルである。多くのトライアルでは従来の観察期間内(6〜9月)での再狭窄,TLR, MACEがコントロール群より良好な結果となった。しかし内皮化/治癒過程の遅延により,晩期血栓症や晩期再狭窄の報告が相次いだ。特に晩期血栓症は線源・システムに関わらず4〜10%に発症し,抗血小板薬の中断や新規BMS挿入が高リスクと考えられた。またgeographical missやedge effectにより「edge failure」と称される治療部の両端の再狭窄も問題となっている。これに対し新規BMS植え込みを回避し新規病変あるいはISRに対するPTCAのみに適応を限定する,照射範囲を拡大(延長)する,抗血小板薬をより長期間投与する,などの対策が一定の成果をおさめてはいるが, DESの登場と共に窓際に追いやられているのが現状である。
 
 DESは1999年12月にSousaらによるシロリムス溶出性ステント(sirolimus-eluting stent: SES)の臨床応用からその歴史が始まった。シロリムスは細胞周期をG1相後半で停止させ,血管傷害に反応した血管平滑筋細胞の増殖・遊走を抑制する作用を有する。「Cypher(=Cipher:(1) ゼロ,(2) 暗号を解く鍵」と名付けられたそのステントは,FIM[24]にて安全性・有効性が確認された後に,BMSとの最初のRCTであるRAVELDB[25]において「late loss;0,再狭窄;0,TLR;0,ステント血栓症;0」という驚異的な結果でその名に応えてみせた。その後SIRIUSDB[26]E-SIRIUSDB[27],C-SIRIUS[28]へと対象病変が複雑化し複数ステントも多用され「ゼロ」の維持はできなくなったが,それでもBMSに対する圧倒的な優位性は保たれた。上記の4つのRCTに2つのnon-RCT(DIRECT[29]・SVELTE[30])を加えたLeonらの2074例でのメタ解析[31]では,late loss,再狭窄率,TLRはSES,BMSで各々0.21mm vs 0.81mm,6.9% vs 39.8%,3.5% vs 17.1%(いずれもP<0.0001)であった。またそのサブ解析から,病変長・血管径・糖尿病・分岐部病変などBMSで論じられた因子は依然として再狭窄のキーファクターであること,(亜)急性冠閉塞はBMSと同程度の1%以下と容認できる範囲であることなどが判明した。さらに再狭窄が特にステントの近位端に多く見受けられることから,病変およびバルーンによる血管傷害部位をフルカバーするべく,brachytherapyと同様に“longer is better”が提唱された。
4. DESの現状と課題
 2004年3月に抗癌剤を用いたパクリタキセル溶出性ステント(paclitaxel-eluting stent: PES)がFDAに認可され(日本では未承認),DESはより“質”が問われる時代に入った。現在世界中で1000を超える大小のトライアルが進行中である。DESの現状と課題を(1) 有効性,(2) 安全性,(3)耐久性の三つのキーワードで考えてみる。
1) 有効性
 初期RCTの良好な結果を受けてDESは急速に広がり,米国ではステントの90%以上,本邦でも60〜70%を占めるようになった。これに伴って適応除外のない“リアルワールド”の成績が注目されている。RCTとしてはE-SIRIUS (SES),TAXUS V(PES)DB[32],registry(登録研究)としてはRESEARCHDB[33]・e-Cypher (SES),WISDOM (PES)などが代表格であり,再狭窄・TLRについては十分な有効性が示された。また従来合併症が高いとされてきた病変や臨床像のサブグループについても,個別にその有用性が検討されている。病変としては分岐部病変・LMT病変・慢性完全閉塞・ISR・小血管などであり,臨床像としては急性心筋梗塞・糖尿病・多枝病変などである。代表的なトライアルを次に示す(サブ解析や進行中のトライアルも含む)。

病変部位・臨床像 SES PES
分岐部病変 SIRIUS bifurcation RCT[34]
Millan bifurcations[35]
 
左冠動脈主幹部病変 LMCA stenting in S. Korea[36]  
慢性完全閉塞 SICTO (registry)[37]  
ステント内再狭窄 SISRDB (vs brachytherapy)[38]
ISAR-DESIREDB[39]
TAXUS IIIDB[44]
TAXUS V ISRDB[45]
ISAR-DESIRE[39]
小血管 SES-SMARTDB[40]
SVELTE[30]
TAXUS IIDB[46]IVDB[47]VIDB[48]
急性心筋梗塞 RESEARCH[33]
STRATEGYDB[41]
HORIZONS
TYPHOON[49]
糖尿病 DIABETESDB[42]  
多枝病変
(vs CABG)
ARTS II[43]
COMBAT[66]
SYNTAX[50]

  有効性に関する第三の柱はhead-to-head clinical trialである。対立軸としてはSES vs PES,DES vs CABGが特に注目されている。
 SES vs PESではSIRTAXDB[51],ISAR-DESIRE,ISAR-DIABETESDB[52]REALITYDB[53],CORPAL[54]TAXiDB[55],ISAR-SMART 3[56]等がRCTとして報告され,予後に差はないもののSIRTAX,ISAR-DIABETES,ISAR-SMART 3で再狭窄・TLRにおいてSESが優っていた。
 一方,PCI vs CABGは PTCAの時代にRITA-1DB[57],ERACI I[58]GABIDB[59]EASTDB[60]CABRIDB[61]BARIDB[62]等が,BMSでもERACI IIDB[63],ARTS I[64]SoSDB[65]などが行われた。ERACI IIを除いていずれも予後に差はなく,再血行再建術においてCABGが勝るという結果であった。またBARIサブ解析の結果から糖尿病症例ではCABGが予後を改善すると結論されていた。DES vs CABGは糖尿病,多枝病変,LMT病変を対象にARTS II,COMBAT (SES)[66],SYNTAX (PES),FREEDOM (SES & PES)[67]などが進行中である。現在までのところARTS Iをコントロール群としたARTS IIにおいて,1年予後 (死亡・脳卒中・心筋梗塞)はDES群で有意に改善し,MACCE(死亡・脳卒中・心筋梗塞・TLR)もCABG群と同等との結果が出ている。
 そして最も注目すべき「有用性」は,果たしてDESがBMSに比し予後を改善できるか,であろう。しかしRAVELから4年,残念ながらいかなるRCTでもBMSとの間に死亡やQ波梗塞発症率の差異は見出せていないのが現状である。
2) 安全性
 最重要課題は内皮化の遅延,あるいはポリマーによる炎症やアレルギー反応が原因とされる晩期ステント血栓症である。2004年,McFaddenらによって,DES植え込み後300日以上が経過し,抗血小板薬を中断したSES 2例,PES 2例の晩期ステント血栓症が報告された[68]。SES後の内皮化は16ヵ月で85%以上,4年で95%以上との分析もあるが,RAVEL/SIRIUS/E-SIRIUS/C-SIRIUSのメタ解析[69]では1〜3年の経過中,BMS群の0例に対しSES群で4例 (0.4%)のステント血栓症が報告された。またTAXUS II・IV・V・VIでも半年以降2年までの間にBMS群;0例に対しPES群;6例 (0.7%)でステント血栓症が発症している[70]。多くはチエノピリジン系抗血小板薬の非投与例であり,その至適投薬期間について今後も十分に検討していく必要がある一方,polymer-free DESの臨床試験ELUTESDBも行われている[71]
3) 耐久性
 もう一つの注目は,brachytherapyで経験したlate catch-up(晩期再狭窄)の有無である。現時点ではFIMおよびRAVELでの4年後のデータが最長であるが,RAVELでは1〜3年の間のTLRがBMS群;118例中0例に対しSES群;120例中4例と報告された。一方,SIRIUS/E-SIRIUS/C-SIRIUSを加えたメタ解析やTAXUS II・IV・V・VIのメタ解析では1年後からの2年間,TLRにおけるDESのアドバンテージは維持されている。耐久性に関しても結論を出すのは早計であろう。
おわりに
 PTCAから約30年,我々はようやく再狭窄という難攻不落の山を超えつつある。しかしそこでたどり着いたのは,「再狭窄・TLRを減らしただけでは予後の改善にはつながらない」という次の難問であった。急性冠症候群のメカニズムの解明とその予防,慢性心不全に対するmedical・mechanichal approach,不整脈死への対策等々,molecular biologyやbiomedical engineeringの進歩に支えられながら,PCI前後の循環器医療がますます重要となってくる。その結果として果たしてPCIがCABGを凌駕できるか,本当の意味で患者の予後を改善できるのか。我々インターベンションを行う者としてはまだまだ夢の途中なのである。
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