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2003.Jan
 不整脈  
富山医科薬科大学第二内科(現:富山大学大学院医学薬学研究部)  井上 博
 ここ数年に報告された不整脈領域の大規模試験で注目すべきものは,心房細動治療方針に関するものと植え込み型除細動器に関するものであろう。いずれもこれまでの治療方針の考え方に大きな修正を迫るものであり,わが国独自の成績がない状況では,これらの成績を踏まえた診療の在り方を模索する必要がある。

1. 心房細動の治療方針

 心房細動は疫学的研究において心臓死の危険を増大させるほか,心原性塞栓症の原因として重要な不整脈であることが示されている。心房が細動状態となっていることがそもそもの原因であり,洞調律を維持できれば塞栓症の危険は減り,心機能抑制も防ぐことが期待できる。心房細動患者に抗不整脈薬が投与された場合,心機能低下例では死亡率が高くなる[SPAF(Stroke Prevention in Atrial Fibrillation Study), J Am Coll Cardiol 1992;20:527-32PubMed]。しかも,心房細動を洞調律に戻しこれを維持することはしばしば困難であり,細動はそのままにして心拍数をコントロールする治療方針が採用される場合も多い。当然,このような場合には塞栓症の予防のためにワルファリンによる抗凝固療法が必要となる。
 心房細動の基本的な治療方針である洞調律維持(rhythm control)と心拍数コントロール(rate control)の効果を比較した前向き試験の成績が公表された。これらの試験の成績は一言でいえば,心拍数コントロールは洞調律維持に劣るものではないということである。個々の試験については本トライアルデータベースに採り上げられているが,以下に簡単に概要をまとめてみる。

1) PIAF(Pharmacological Intervention in Atrial Fibrillation) DB

 症状のある持続性心房細動例を対象に心拍数コントロール(125例,ジギタリス+ジルチアゼム)と洞調律維持(127例,アミオダロン)に無作為に分け,オープン試験で1年間追跡した。洞調律維持群では56%の例で洞調律が維持できた。6分間歩行距離は洞調律維持群の方が長かった(550m対510m,p=0.008)が,自覚症状の改善とSF-36を用いたQOLの評価については両治療群で差はなかった。入院(69%対24%,p=0.001)や投薬の中止(25%対14%,p=0.036)は洞調律維持群で有意に高頻度であったが,洞調律維持群の入院の理由はDCショックやアミオダロンの副作用などであった。この試験から,1)心拍数コントロールでも洞調律維持でも同様の臨床効果が得られ,2)運動耐容能の改善が必ずしもQOLの改善に結びつかず,3)心拍数コントロールは費用対効果の上で優れている可能性があることが示された。
 
2) AFFIRM(Atrial Fibrillation Follow-up Investigation of Rhythm Management) DB

 4000例を超す心房細動(塞栓症の危険因子を1つ以上併せ持つ)例を対象に,洞調律維持(アミオダロンあるいはソタロール投与が約2/3)と心拍数コントロール群に無作為に分け,一次エンドポイントを全死亡として平均3.5年追跡した。洞調律維持群では,5年後の洞調律維持は約63%であり,初回の心房細動発作例が35%含まれているにもかかわらず,死亡率(26.7%)は心拍数コントロール群(25.9%)に比べて高い傾向を示した(p=0.08)。脳梗塞の発生率は,洞調律維持群でワルファリンの服用例が約70%であったことも影響してか,心拍数コントロール群(5.5%)と洞調律維持群(7.1%)で差がなかった。層別解析をすると心拍数コントロール群で死亡率が有意に低かったものは,高齢(65歳以上),冠動脈疾患,左室駆出分画≧50%,うっ血性心不全のない例であった。
 以上の成績は,1)我々の期待に反して洞調律維持群で脳塞栓症の発生が抑制されず,2)死亡率に至っては心拍数コントロール群のほうが低い傾向を示している。初回の心房細動発作例が約1/3含まれているにもかかわらず,塞栓症の危険因子を1つ以上持つ例を対象にしたためか,約1/4の例がいずれの治療群でも死亡していることは,我々の日常診療の場では経験しないことである。洞調律維持の成否を自覚症状に頼っていると,約12倍の頻度で生じうる無症候性心房細動発作を見逃す危険があり(Circulation 1994;89:224-7 PubMed),再発をどのように予防するかが重要になると思われる。塞栓症の危険因子を1つ以上持つ例が対象にされたが,危険因子を持たない例への対応については明らかにされたわけではない。
 以上のように限界はあるが,本試験は1)心拍数のコントロールが洞調律維持に決して劣る治療法ではなく,2)洞調律維持を治療目標にする場合でも,危険因子を持つ例ではワルファリンの継続投与が必要なことを示している。
 
3) RACE(Rate Control versus Electrical Cardioversion for Persistent Atrial Fibrillation) DB

 過去に1回以上DCショックを受けたことがある再発性の持続性心房細動(約7%は心房粗動)522例を対象に,洞調律維持と心拍数コントロールに無作為に分けて平均2.3年追跡した。エンドポイントは死亡,心不全,血栓塞栓症,出血,ペースメーカー植え込み,薬剤の重篤な副作用を合わせたものとした。両群とも約90%が塞栓症の危険因子を1つ以上持っていた。洞調律維持群では試験終了時点で39%の例が洞調律を維持していた。エンドポイントの発生は心拍数コントロール群17.2%であり,洞調律維持群の22.6%に比べて低い傾向にあった(p=0.11)。
 以上の成績は前述の2つの比較試験と同様に心拍数コントロールは洞調律維持に劣る治療法ではないことを示している。このような結果となった理由として,1)心不全の発生に両群で差がなく,2)洞調律に戻っても抗凝固療法を止めると脳梗塞が発生し,3)出血の合併が両群で同様に見られ,4)洞調律維持群で抗不整脈薬の副作用が多く出現したためと考えられる。

 心房細動例にみられる電気的リモデリングの概念(Circulation 1995;92:1954-68 PubMed)が提唱されて以来,心房細動は出来るだけ早期に洞調律に戻すことが重要と考えられるようになったが,以上の3つの比較試験の成績は洞調律化やその維持がすべての症例にとって最善の治療というわけではなく,心拍数コントロールの意義について見直しを迫るものである。
2.植え込み型除細動器(ICD)の大規模試験
CASH(Cardiac Arrest Study Hamburg) DBCIDS(Canadian Implantable Defibrillator Study) DBAVID(Antiarrhythmics versus Implantable Defibrillators) DBMADIT-II(Multicenter Automatic Defibrillator Implantation Trial II) DB
 二次予防試験であるCASH(Cardiac Arrest Study Hamburg)CIDS(Canadian Implantable Defibrillator Study)の成績が2000年に公表された。心室頻拍・細動の既往例(CIDS)やこれらによる突然死からの蘇生例(CASH)に対して,ICDと抗不整脈薬(CIDSはアミオダロン,CASHはアミオダロン+メトプロロール)の効果を比較したものである。CIDSでは全死亡(8.3%対10.2%/年),不整脈死(3%対4.5%/年,p=0.094)ともICD群の方が低値ではあったが,有意な差とはならなかった。CASHでは全死亡(36.4%対44.4%,p=0.081)には有意な差はなかったが,突然死(13%対33%,p=0.005)はICD群で有意に少なかった。
 これら2つの二次予防試験にAVID(Antiarrhythmics versus Implantable Defibrillators)を加えてICD(934例)とアミオダロン(932例)の二次予防効果を比較したメタ解析(Eur Heart J 2000;21:2071-8 PubMed)では,平均2.3年の追跡で総死亡のハザード比は0.72(p=0.0006),不整脈死では0.5(p<0.0001)となり,ICDがアミオダロンよりも優れていることが示された。この成績は,ICDによって年間死亡率が12.3%から8.8%に減少し,ICDを29例に植え込むことにより1年間に1人の死亡を予防できることを示している。
 ICD治療の在り方について考え方を大きく変えるきっかけとなったものがMADIT-II(Multicenter Automatic Defibrillator Implantation Trial II)である。この試験は心筋梗塞後(1カ月以上経過)に左室駆出分画が30%以下に低下している例を対象にして,ICDと通常の薬物治療の効果を比較したものである。致死性の心室性不整脈の有無は不問とし,ICD(742例)と薬物治療(490例)に3:2に割付け,全死亡を一次エンドポイントとした。ICD群(14.2%)の方が薬物治療群(19.8%)に比べて全死亡が有意(p=0.016)に低値であることが判明し,20カ月の追跡期間で中止された。ただし,生命予後が改善されたためか,心不全の発症・悪化はICD群で多い傾向を示した(19.9%対14.9%,p=0.09)。
この試験の重要な点は,心筋梗塞後に左室機能が低下している例では,致死的な心室性不整脈の有無にかかわらずICDによって生命予後が改善されたことである。しかし,この試験の対象例のような症例すべてにICDを植え込むことは,ICDの値段が高いため医療保険財政からみると現実的とはいえない。たとえば,除細動機能のみを持つ安価なICDをこのような症例に植え込み,もし除細動器が作動した場合にはさまざまな機能を持った通常のICDに交換する方法などが考えられるかもしれない。
 ICDを植え込んだ場合の費用対効果の検討が二次予防試験であるAVID試験の症例を対象になされている(Circulation 2002; 105:2049-57 PubMed)。抗不整脈薬(主としてアミオダロン)に比べてICDを用いた場合には,1年生命予後を延長するのに約66,000ドル余計にかかるという結果であった。この費用対効果は,致死的不整脈から蘇生された症例に対する二次予防試験としては,中等度の効果と判断される。なお,左室駆出分画>35%の例では,約54万ドル余計に費用がかかるため費用対効果の面からは推奨される治療法とはいえないこととなる。同様の結果は別の研究者も報告している(Ann Intern Med 2001;135:870-83 PubMed)。
 わが国においてもICDの植え込み例は増加しつつあるが,今後このような費用対効果の面からの解析が望まれる。
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