ONTARGET
ONgoing Telmisartan Alone and in Combination with Ramipril Global Endpoint Trial
心血管疾患,糖尿病を有する高リスク患者において,ARB(telmisartan)のACE阻害薬(ramipril)に対する非劣性が認められる。presenter: Salim Yusuf, MD ( McMaster University, Canada )
心血管イベントの発症においてramiprilとtelmisartanの有効性に差がみられなかったが,予想された如く,咳などの点で忍容性はtelmisartanで若干有効であったので,ACE阻害薬の代替薬としての位置付けは確立されたものと考えられる。
心筋梗塞の発症の抑制がARBよりもACE阻害薬の方が優れているかどうかについては,今回の成績では両剤に差がみられなかった。(NEJM電子版)
併用療法については,イベント抑制に効果はなく,低血圧や失神が多い点で,ACE阻害薬とARBの併用の有用性は否定された。Val-HeFTやCHARM試験では併用により心不全の入院が抑制されたが,本試験は心不全患者を対象としていないため疾患対象により併用療法の効果は異なる可能性があると考えられる。ただ,本試験で,併用群で腎機能低下が有意に多く認められたのは,高用量の併用療法による糸球体内圧の過度の低下が原因になっている可能性があるものと考えられる。いずれにしてもVALIANT試験の結果も合わせて併用療法の位置付けは後退したといえよう(堀)。
一次エンドポイントの同等性はある程度予想された。しかし,大方の予想と異なったことは1) ACE阻害薬に対するARBの上乗せ併用効果は全く認められず,副作用を増強させるだけであったこと,そして2) 心筋梗塞予防効果においてARBはACE阻害薬に劣らなかったことである。
これまでACE阻害薬とARBの比較試験はELITE-II,OPTIMAAL,VALIANTがあるが,いずれもARBがACE阻害薬より優れるという結果を示していない。ONTARGETはこれらのトライアルの結果を考慮して,ARBの心血管保護効果はACE阻害薬に劣らない,という控えめな仮説を証明するために企画,実行された試験である。これまでの3つのトライアルではcaptoprilという最も古典的で,かつ持続性も短いACE阻害薬を比較対象に選んだことが問題となっていたが,ONTARGETはACE阻害薬の中でもHOPE試験で“降圧を超えた心保護効果”を示したramiprilとPPAR-γによるインスリン抵抗性改善作用も期待され,かつ降圧効果の持続性に優れるtelmisartanとの比較であり,その結果はおおいに注目された。
対象が心筋梗塞既往約50%を含む非常に高リスク症例であることから,本試験の結果から,ARBは心筋梗塞を引き起こすといった懸念は一応は払拭されたと考えられるが,この結果がARBのclass effectか,あるいはほかのARBではどうなのかという問題は残る。本試験の結果は,基礎医学者が説くように,レニン-アンジオテンシン系の受容体レベルでの完全なブロックが臓器保護にもっとも優れているものでないことも証明した。
本試験はあらためてこれまでの多くの大規模臨床試験が示してきたように,ACE阻害薬が心保護の面ですぐれた薬剤であることを認識させた点でその意義は大きい。併用の有効性が全く認められなかった理由は不明であるが,すでに抗血小板薬,スタチン薬が処方されており,かつ十分な降圧が得られている段階ではもはや更なる心保護効果は得られにくく,副作用が増強するばかりなのかもしれない。とくに併用によって腎機能が悪化したという結果は注目すべきであり,今後我が国のガイドラインにも注意項目あるいは禁忌事項として盛り込む必要があろう。
本試験の結果は,咳を含む忍容性を除けば高価なARBは廉価なACE阻害薬を上回る有用性はないことを証明した訳であり,実地臨床の場では,ACE阻害薬で咳の副作用がでたときにARBに切り替える,というのが医療経済を考慮し,かつEBMに即した治療法選択ということになろう(桑島)。
■患者背景
平均年齢(ramipril群66.4歳,telmisartan群66.4歳,ramipril+telmisartan併用群66.5歳),女性(27.2%,26.3%,26.5%),血圧(141.8/82.1mmHg,141.7/82.1mmHg,141.9/82.1mmHg)。
疾患:冠動脈疾患(74.4%,74.5%,74.7%),脳卒中/一過性脳虚血発作(21.0%,20.6%,20.9%),糖尿病(36.7%,38.0%,37.9%)。
治療状況:スタチン系薬剤(61.0%,62.0%,61.8%),抗血小板薬(80.5%,81.1%,81.1%),β遮断薬(56.5%,56.9%,57.4%)。
[忍容性]ramipril群 vs telmisartan群
治療中止例は,ramipril群2099例(24%),telmisartan群1962例(23%):ramipril群と比較したtelmisartan群の相対リスク(RR)は0.94(P=0.02)。
主な中止理由は,低血圧(症候性):149例 vs 229例(RR 1.54,P=0.0001),失神:15例 vs 19例(RR 1.27,P=0.485),咳:360例 vs 93例(RR 0.26,P<0.0001),下痢:12例 vs 19例(RR 1.59,P=0.20),血管性浮腫:25例 vs 10例(RR 0.40,P=0.012),腎機能障害:60例 vs 68例(RR 1.14,P=0.46)。
ramipril群 vs併用群
治療中止例は,ramipril群2099例(24%),併用群例2495例(29%):ramipril群と比較した併用群の相対リスク(RR)は1.20(P<0.0001)。
主な中止理由は,低血圧(症候性):149例 vs 406例(RR 2.75,P<0.0001),失神:15例 vs 29例(RR 1.95,P=0.032),咳:360例 vs 392例(RR 1.10,P=0.189),下痢:12例 vs 39例(RR 3.28,P=0.0001),血管性浮腫:25例 vs 18例(RR 0.73,P=0.300),腎機能障害:60例 vs 94例(RR 1.58,P=0.005)。
[一次エンドポイント]ramipril群 vs telmisartan群
ramipril群:1412例(16.5%),telmisartan群:1423例(16.7%):RR 1.01(95%信頼区間0.94〜1.09,P=0.004 for non-inferiority),収縮期血圧(SBP)で調整後のRRは1.02(0.95〜1.10,P=0.006 for non-inferiority)。
ramipril群 vs 併用群
抑制効果において併用群はramipril単独群を凌げず,有害イベントが増加した。
・ramiprilとtelmisartanの併用治療にramipril単独投与を上回る有効性は認められず有害事象が増加する。